そのニュースを聞いて、胸の奥からなんだか判らない熱いものが込み上げてきた、というのは実は大袈裟でもなんでもない。 昨晩、遅い夕食のカレーライスを食べながらスポーツニュースを見ていると、アテネオリンピックに出場する野球代表チームの長嶋監督が、アテネでの采配を断念した、という。テレビ画面では息子の長嶋一茂が沈痛な面持ちでその内容を話していた。 正直なところ、俺は長嶋監督には“優しくない”ファンなのだと思う。このニュースを聞いて、率直に長嶋監督が代表チームの指揮を執れないことを残念だと思った。俺は、アテネの地で背番号3の監督姿をテレビで応援したかったし、ゲームに勝利したナインをベンチ前で迎える長嶋監督の笑顔が見たかった。長嶋監督が脳梗塞で倒れ、大変なリハビリに取り組んでいる、ということを知りながら、だ。 一方では、長嶋監督がアテネ行きを断念したことにほっとしている自分もいる。 3年半前、実家の母が脳梗塞で倒れた。 知らせを受けた俺は、その日大事な顧客へのプレゼンがあったが、訳を話して母が担ぎこまれた茨城の病院へ走った。集中治療室で意識の薄い母はかなり危険な状態だった。なんとか一命は取りとめたものの、今でも後遺症で左半身が不自由で、俺の顔を見るたびに、母は自分の身体の不自由さを嘆いて相当後向きなことを口にしたりする。「そんなこと言うなよ」と俺は軽く流すようにしていて、今はぶつぶつと文句を言いながらリハビリに通っている。 俺はきっと、母にこう言いたかったのかもしれない。
『長嶋監督もオフクロと同じ脳梗塞で倒れたけど、ほら、元気にオリンピックに出場してんじゃん。オフクロも頑張ってリハビリ続けろよな』
長嶋監督が指揮を執らなくても、あの野球代表チームは「長嶋ジャパン」である。 監督不在という緊急事態を迎え、俺自身の応援体制もさらに強化しなければならない。 で。 今日はほぼ定時に会社を後にし、御茶ノ水にあるミズノのショップで長嶋ジャパングッズを買いに走りました。『NAGASHIMA』のネームが入った、胸には『JAPAN』のロゴが入ったTシャツ。 長嶋ジャパンの試合はこれを着て観戦するぞ。がんばれ、長嶋ジャパン。
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