のづ随想録 〜風をあつめて〜
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【のづ写日記 ADVANCE】

2003年02月11日(火)  悲惨

 鼻血というのは体質によって出やすい人と出にくい人といるのだろうか。
「俺、鼻血って出したことないんだよな」と言ってのける人と俺は何人か会ったことがある。普通、誰でも子供時代などはちょいちょい鼻血を出して首の裏をトントンしてもらった経験がありそうなものだが、体質的に鼻血が出にくい人というのはそういう経験もないらしいのだ。
 俺はどちらかというと前者のほうに該当した。今でこそ鼻血など出すようなことは滅多にないが、社会人となる前までは時折鼻血状態に陥ることは少なくなかったような気がする。

 多分、高校1,2年の頃だったか。まだその時はサッカー部に所属していて、日々ツラい練習に耐えてボールを追いかけていた。
 その日の練習で、俺は運悪くチームメイトが放った低い弾道のセンタリングを顔面で受けてしまい、そのままもんどりうって倒れた。打ち所が特に悪かったということはなかったが、鼻の中を傷つけたらしく、家に帰っても鼻血が治まらない。食事をしているときも、テレビを見ているときも、宿題をやっつけるために机に向かっているときもずっと鼻にはティッシュが詰められていた。しばらくすると出血は治まったような感じになるが、ちょっと鼻をこすったりするとすぐまた鮮やかな赤い血が顔を出す。
 なるべく鼻にさわったりこすったりしないように注意しながら、俺はその晩を過ごした。そしてベッドに入る頃にはようやく出血も治まったようだった。
 翌朝。
 その当時、俺は(半分ウケ狙いも含めて)自分の弁当を作っていたので、毎朝5時半頃には起きていた。前日の夕飯の残りを弁当箱につめ、玉子焼きなどをちょちょいと作るだけの簡単な手作り弁当である(鮭フレークをご飯の上に『ハート型』にちりばめたりしていた。ばかだ)。
 俺はベッドから起き出し、大あくびを二つほどして階下に降りていった。そのまま洗面所で鏡を見ると、そこには見事な化粧を施した歌舞伎役者が、いた。
 事の顛末は容易に想像が付いた。どうやら俺は眠っている間に違和感のある鼻をこすり倒したらしい。当然、傷の癒えない鼻腔からはふたたび鮮血がどくどくと流れ出した。俺は寝相が悪く、大抵右や左に体ごと向けて眠っているので、そのまま鼻から流れ出した鮮血は左の頬を伝い、寝返りを打つとそのまま鮮血は右の頬を伝っていった。寝返りの数だけ左右の頬には縦横に伸びる幾筋の鼻血の乾いた後がくっきりと残され、歌舞伎役者と化した俺は今にも見栄を切りそうな勢いだった。
 一瞬、面白いと思ったが、なにより早朝の光の中で鏡の中の歌舞伎役者と対峙している自分が情けなかった。


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