のづ随想録 〜風をあつめて〜
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【のづ写日記 ADVANCE】

2003年01月09日(木)  散漫

 何も考えずにうすらぼんやりと道を歩いていたりすると、何気なく目にする風景の文字に驚愕することがある。
 年末、年越し蕎麦用の天ぷらを買いに地元の西武百貨店の地下食品売り場へ出掛けた。
 蕎麦好きの俺は毎年確実に年越し蕎麦を食べるが、よりおいしくいただくために飛び切りの種を購入しようというわけだった。何より俺は百貨店の地下食品売り場が好きで、ただぶらぶら歩いて美味そうなもの達を観ているだけでも十分楽しめる性質である。
「ああ、どれもこれも美味そうだなあ……。でもアレコレ買って帰ったらツマが怒るなあ……」
 唾を飲み込みながらぼんやりショーケースを眺めていると、視界の端っこにとんでもない文字が飛び込んできた。

『特製肉まん(犬)』

 ――おいおい、犬肉100パーセントかよ! コンマ数秒のうちに鋭くツッコんだが、実際はなんのことはない『特製肉まん(大)』の見間違え。光の具合で、余計な影が見えたらしい。単純な見間違えだが、なかなかおもろい見間違えだと満足。

 今朝、通勤の西武線の中で。
 昨晩の帰宅が遅くやや寝不足気味だった俺は、いつもどおり6時に起床したもののそこから肉体の起動に支障を来し、コタツの中に首まで入り込みうだうだと時間を過ごしてしまっていた。遅刻しない程度の時間に家を出て、半分夢遊病者のように電車に乗り込んだ。
 自動ドアのガラス窓のところに寄り掛かりながら、後方へ飛び去ってゆく冬の朝を眺めていた。視線の焦点がズレて、ガラス窓に貼ってある広告の文字が視界に入った。
『催眠療法』
 ふうん、そんな療法もあるのねえ……などと考えるともなく考えていたら、ちょうどその言葉の上に添えられた文字がものスゴイ事に気づいた。

『引き込まれないでください』

 ――おいおい、催眠療法の広告になんで『引き込まれないでください』なんだ! 俺の眠気は一瞬にして覚めた。
 しかししかし、これもまた見間違え。よく見れば『ドアに手を引き込まれないでください』という、電車の扉によくある注意書きだったのだ。よく出来た、嘘のようだが本当の話。


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