正月休みが終わる。 俺とツマと、互いの実家に顔を出し、浅草の浅草寺へ初詣に行く、というのが毎年の正月の過ごし方になっているのだが、今年は初詣を予定していた日に結構深刻な雪が降り、その勢いを思いきりそがれてしまった。その後、ツマにはツマなりの用事もあり、初詣は来週以降に延期ということで話は落ち着くこととなった。時間を持て余しそうになったので、俺は、 「んじゃ、俺はちょっと“健康になりにでも行ってこようかな”」 我が家では“健康になりに行く”とは“スーパー銭湯へ行く”と同義である。 昨年の夏ごろからちょっと流行りのスーパー銭湯(郊外型大型銭湯)にハマっている、ということはココでも書いたことがあったろうか。ふとしたきっかけで、へとへとになった仕事帰りや週末の休日などにスーパー銭湯へ行くようになったのだが、コレが実にいい。なかなか温泉旅行などには行くことが出来ないが、このスーパー銭湯にはちょっとした露天風呂があって、普段なかなか利用できないサウナやジャグジーも充実していることもあり、月に1、2度くらい利用するようになった。 ツマにこのスーパー銭湯を説明するときに「まあ、健康ランドみたいなものだよ」と言ったことから、我が家では“健康になりに行く”がひとつのセンテンスとして定着してしまったわけで。
その日も俺は、最近固定しつつあるお決まりコースを経て馴染みのスーパー銭湯へ車を走らせた。 まずバッティングセンターへ行って、ジャイアンツの上原やライオンズの松坂あたりを相手に約100球、1,000円分の打ち込みを行う。――念の為に言っておきますけど、ホンモノが投げてくれるわけじゃないからね。上原、松坂といったプロ野球選手のピッチング映像が映し出されて、そこからボールが飛んでくるのです。 今年“初打ち”となったわけだが、調子が良かったのか、松坂の5球目、外角高めのストレートを見事ホームラン。今年のジャイアンツも安泰だ――と呟きながら俺はホームラン賞のぬいぐるみを手にバッティングセンターを後にする。100球の打ち込みってのも結構いい運動になるんですよ。 次に大型古本屋に立ち寄って文庫本を一冊購入する。そしてそのまま文庫本を持ってスーパー銭湯へ、というのがお決まりコースである。バッティングセンター・古本屋・スーパー銭湯が国道沿いの比較的近くに並んでいるので便利なのだ。 文庫本を手に、露天風呂に入る。そこでじっくり湯につかりながら文庫本を読みふける、というわけだ。普段ゆっくり本を読む時間を作れないので、露天風呂で気持ち良く読書――という一石二鳥スタイル。小一時間も湯に浸かっていればじっくり身体の芯まで温まり、またひんやりとした空気が火照った頬に心地よく、うん、気分爽快。露天風呂で本を読んでいる人というのは、実は俺以外にも時折見かけるんですよね。ちなみにこの日俺が露天風呂で読んでいたのは『新橋烏森口青春篇(椎名誠・新潮文庫)』という自伝的青春小説。昔、単行本で読んだが、最近無性にまた読みたくなったので、古本屋で100円で購入。 一度脱衣所に戻り、文庫本をロッカーの中にしまって再び浴場へ。読書タイムからスーパー銭湯満喫タイムへの移行である。ジャグジー、変わり風呂、打たせ湯、サウナなど一通りまわるわけだが、俺が一番好きなのはスチームサウナ。一般的なサウナほどじりじりと肌を焼き付けるような熱さがなく、霧のような水蒸気で満たされたスチームサウナなら長い時間居ても平気だ。このスチームサウナというのはどちらかというとスーパー銭湯の中ではマイナーな位置づけなのか、あまり人が来ないのがよい。俺はそれをいい事に、スチームサウナに誰もいないときは気分よく鼻歌などを歌っている。エコーが効いて、歌っていて気持ちいいんだよねえ。何を歌っているか――もちろん、さだまさしですよ。 浴場には約2時間半程度いるだろうか。脱衣所で着替え、自動販売機でお決まりのコーヒー牛乳を買う。銭湯の後のコーヒー牛乳は、これはもう条例で義務化してもいいくらいであろう。腰に手を当てて一気に飲み干し、俺のスーパー銭湯は幕を閉じる。
――ここまで書いてきて、無性に温泉に行きたくなってきた。 仲間うちで温泉旅行なんてもの久しく行っていないので、今年あたり実現させたいものですねえ。いかがですか?
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