のづ随想録 〜風をあつめて〜
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【のづ写日記 ADVANCE】

2002年10月19日(土)  奴隷

 土曜出勤が続く。

 休日出勤が続いている人などは他にもたくさんいるだろうし、別段、俺自身も苦に思っていたわけでもないのだが、さすがにここにきて土日の2日間をゆっくり休みたい、というような気分にもなってきた。先週の体育の日がらみの週末に至っては、三連休どころか『三連勤』だったなんて、とても笑えない。
 この秋に異動になって以来、「仕事」というよりは「作業」というカンジも否めなくて、オフィスではいつもの調子で冗句を飛ばしてはいるものの、実は気分が晴れない。

 パソコンの電源を切り、昼メシの為にエレベーターを降りる。
 指折り数えてみたら、6週連続の休日出勤だ。『ザ・ベストテン』の今週の第1位やないっちゅうねん。

 奴隷。
 「奴隷のように働く」というが、今の俺は奴隷か。
 実は「奴隷」という台詞が、好きだ。その歴史的背景や意味合いはともかくとして、語感が持つ時代錯誤な大仰さが、いい。

 その全体のイメージは“茶色”。
 粗末なボロ布だけを腰に巻き付けた、泥と汗にまみれ痩せ細った姿。何十人、何百人もの奴隷が先の見えない、過酷な重労働を強いられている。当然、その傍らには黒光りした鎧を身にまとった屈強な男が、手の平で革のムチの乾いた音を響かせながら奴隷を監視している。
 あちらでは数メートル四方の巨大な岩をロープでゆっくりと引っ張っている奴隷が。遅々として進まないその巨大岩の上にはやはり黒光りの鎧が立っていて、気勢を上げている。
 あちらでは巨大な歯車のようなものを奴隷たちがゆっくりと回している。
 こちらではいよいよ体力の限界に至った初老の奴隷が、息も絶え絶えに横たわっている。当然、黒光りの鎧が倒れた奴隷の背中にムチをうならせているが、もはや虫の息。
 奴隷たちがいったい何の為の作業を強いられているのかは、実はよくわからない。
 そして、その場面のBGMに低く重く流れる『奴隷のテーマ』。
――ああ、こればっかりは実際に歌って聴かせないと伝わらないかもしれないなあ……。

 ココに書くネタとして、そんなことをぼんやりとエレベーターの中で考えていたら、1階に着いたとたん、役員たちを数人引き連れた社長がエレベーターに乗り込んできた。

 ああ、びっくりした。


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