誕生日や結婚記念日などにはだいたいどこかへ食事に行く、というのがウチの定番になっていて、今年の結婚記念日には表参道のレストランへ出掛けた――と言う話は以前に紹介した。 「今年はどこか行きたいところ、ある?」 とツマに聞かれ、俺は迷わず答えた。 「『香おる』に行きたい」 まあ恐らく誰も知らないとは思うが、水道橋駅の東口すぐのところに元ジャイアンツの岡崎郁が経営する焼肉屋がある。昨年だったか、長嶋ジャイアンツがシーズン中に決起集会を行ったことでも有名(――知らないよな、やっぱり)。 ジャイアンツファンとしては一度は足を運んでみたいと思っていたのだが、今年は夫婦揃って十数試合もジャイアンツ戦を観戦していることだし、ここは一気に『香おる』も征服してしまおう、ということで行ってきました。 念のために予約をしていたのだが、池袋の西武百貨店の地下食品売り場で一粒100円くらいの梅干しを購入するなど寄り道をしてしまい、20分程遅刻。ジャイアンツカラーのオレンジ色に染められた壁の階段を降りてゆくと、店員が笑顔で席まで案内してくれた。 とりあえず中ジョッキで乾杯。焼肉屋での基本的オーダーを素早く済ませ、ぐるりと店内を見回した。 一般的な街の焼肉屋――といった程度の広さで、なんと言ってもジャイアンツの選手達のサイン色紙が壁一面に張られているのが圧巻。長嶋監督と王監督のサインだけは特別に大きな額に並べて入れられていた。サインバットも20本くらいあったし、選手と店員が並んで写った写真も幾つか張られていた。 何人もの芸能人のサイン色紙がある中で、笑ったのは“プリティ長嶋”のサイン。長嶋監督の『野球とは人生そのものだ』の台詞をもじって、サインの横に『焼肉とは人生そのものだ』の言葉が。
注文したタン塩も葱タンもカルビも地鶏もしっかりと確実に美味かった。特上の霜降り肉のタタキを貝割れ大根などの薬味と一緒に韓国のりで巻いて食べる“大とろ巻”はオススメメニューだったが、確かに美味い。 丁度俺とツマが座る席のすぐ近くのテレビでオールスター戦が放映されていて、こりゃあジャイアンツ戦がある時にココでビールと焼肉でジャイアンツを応援するってのもいいねえ……てなことをツマと話しながらカルビをはふはふ。 あらかた食べ終わったところで、インターネットで見つけた『香おる』で使えるクーポン券を店員さんに差し出してみた。クーポン券には『岡崎選手の直筆サイン色紙をプレゼント』とある。勿論ジャイアンツファンとしては押さえておいていいグッズである。店員さんは、少々お待ち下さい――と言い残し、店の奥へ。暫くすると、 「すみません。今、サイン色紙を切らしてしまっているので、サインボールでもよろしいでしょうか」 よろしくないわけがなかった。プロ野球選手のサインは色紙に書いたものよりもボールやバットなどにあるサインの方が何倍も価値がある、となんでも鑑定団で見たことがある。岡崎は超一流選手という訳ではないが、俺には宝物にもなるものだ。 満腹感に加え、サインボールまで貰って大満足で俺とツマは店を後にした。 今度はジャイアンツ戦がある時を狙って行ってみようかと思う。その時はきっとジャイアンツファンが店に溢れていて、かなり盛り上がることだろうなあ。その時には店にあった日本酒『不滅の巨人』を注文しなきゃな。
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