| 2002年04月29日(月) |
書くまいと思っていたのだが |
書くまいと思っていたのだが、やはり書いてしまう。 世の中はゴールデンウィークに突入している。今年のゴールデンウィークは前半と後半と分かれていて、三日間くらいの連休から、ずがんと一週間くらいの大型連休となる企業もある、なんてことをラジオで聞いた。俺は営業車のハンドルを握りながら「ふん」と鼻息。 毎年のことなので殆ど気にならないのだが、我が社に“ゴールデンウィーク”という大型連休は存在しない。“ゴールデンウィーク”につながる台詞は「――は海外で過ごそう」などではなく、「――に向けて販売体制の強化および各部門の連動」となるのである。 ウチはもともと祝日が休みになる会社ではない。年末年始と夏休みにまとまった休みが取れるが、あとは基本的には土日が休みの週休二日。しかししかし実際は土日のどちらかは大体仕事をすることになるし(これは今の職種からいって致し方ない)、だからといって振り替え休日を堂々ともらえるわけでもない。ま、今の御時世だから――というのもあるんだけれどね。
「ちょっと休憩しましょうよ」 同僚のAがふいに声をかけてきた。チーム編成の変更で別部隊になってしまったが、この2月までは一緒のチームでやっていた同僚だった。彼が俺を誘った場所は、喫煙者がタバコを吸うために出る事務所のベランダ 。俺はもちろんタバコは吸わないので、実はそのベランダに出たことはなかったのだが、パソコンとのにらめっこに疲れた俺は彼の笑顔についていった。 Aとは特別に仲が良い、という訳ではないが、気がついてみるとお互いの仕事の状況や情報交換、家族の話や住宅ローンの話など、実はいろんな話をしている仲だった。 「今日は会社に来るとき、道がえらく空いてましたね」 「そうだねえ、世の中は連休だもんねえ……」 今日は口惜しいくらいにいい陽気だった。ベランダから浦和の街を見渡せば、暑くもなく涼しくもなく過ごしやすい風が流れ、世間は休みなのでいつものゴミゴミした人の往来がない。ちょうどいい具合に静かな午後だった。 「世の中はお休みなんですよねえ……」 彼がくゆらせるタバコの薄紫の煙が大型連休に眠る浦和の空に吸い込まれていった。
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