ちゃんちゃん☆のショート創作

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追憶【鳴門】
2014年07月16日(水)

※実は意識的に、キャラの口調を原作従来のものとは違わせてあります。だからある程度読まないと、誰の独白かは分からないかも知れません。その辺を楽しんでいただけたら幸いかと。不親切ですが、家族に対する口調って、やっぱ特別なような気がしまして。

 ちなみに ち☆ は単行本で原作を追ってます。ガイ先生がメインになってる巻ぐらいしか持ってませんが(多分全部はそろってないし☆)。WJは時々しか読めません。でも一応、単行本未収録なネタバレありますんで、注意!!

 では、よかったらお楽しみください。

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 やあ・・・父さん、久しぶり。

 このところ全然来なかったこと、怒ってるかい? 親不孝者だ、って。
 本当にゴメンな。
 言い訳はしたくないけど、このところ忙しくって・・・ね。
 その代わり、って言っちゃなんだけど、これからはずっと一緒にいられそうだよ。
 穴埋めはするから、許して欲しいな。

 この花もね、その辺で摘んできた野草だけど、なるべく綺麗なものを選んできたつもりなんだ。あんまり華やかじゃないのは、大目に見てよ。
 本当ならいつもの、同僚の弟子の親が経営してる花屋で、いいのを買ってきたかったんだけど・・・状況が状況だから。


 ───ん? どんなに忙しかったんだ、って?

 数年前だったら、任務、とか、弟子との修行、とかって答えてたんだろうな。

 あれから木ノ葉も色々と、大変だったんだよ。父さんも知ってる、三代目火影様が亡くなってからは、特に。
 火影様以外にも大勢、優秀な忍が殉職してしまったもんだから、上忍・下忍問わずフル出動する羽目になったんだ。木ノ葉の弱体化をよそに知られたらまずい、ってことで。
 五代目火影様は、なかなか人使いの荒い人だよな。仕方ないことではあるけど。

 無論、俺も大忙しだったよ。一応これでも、上忍だからね。

 でも、この際だから自慢させてもらうと、俺の弟子が一人、同じ上忍になってね。時々一人で仕事を任せられるぐらいに、優秀なんだ。

 まあ、元々天才、って呼ばれてるぐらいに有能ではあったんだけど、上忍になってからは特にそれが際立つようになった気がする。だから、彼とツーマンセルを組んだ時は、少し楽をさせてもらったかもしれないな。
 実際、色々と助けてもらったよ。部下ながら、手厳しいところもあったけどね。

 ・・・うん、残念ながら、過去形なんだ。
 もし彼がそっちに行って知り合いになったら、仲良くしてやってよ。
 一発で俺の父さんだ、って分かるだろうから、ちょっとヒかれるかもしれないけどね。根は優しい、いい子だから。


 他の2人の弟子もね、無事中忍になったよ。2人とも気の利く奴らで、俺の至らないところをうまくカバーしてくれている。

 特に、男の方は、凄いよ。
 今だから言えることだが、俺のアカデミー時代に負けないくらい『落ちこぼれ』だったんだ。今でも、忍術も幻術も使えない。まあ、水に浮くことぐらいは出来るけどね。

 でもその代わり、木ノ葉でも屈指の体術のスペシャリストとして成長してくれた。ひょっとして長期戦になったら、俺以上に強いかもしれん。

 もちろん、上司として、上忍として、そして人生の先輩として、まだまだ負けるわけにはいかないけどね。経験の差、と言う点では未だに俺の方に分があるよ。

 ───ん? 女の子の方かい?

 なかなかに気立てが良くて、言うべきことはきちんと口にする。退くべきところは退くし。忍具の扱いは俺でも一目置くかもな。
 何より、さっき言った上忍になった部下と、体術のスペシャリストの中忍との間に立って、潤滑油の役割をさりげなく引き受けてくれているんだ。

 ・・・うん、男同士よくあることではあるんだが、一時期ギスギスした関係だったからなあ、あいつら。

 彼女のやり取りを見てると、男って奴は本当にガキなんだなあ、とつくづく思ったね。もちろん、俺も含めて、の話。

 いい時代になったもんだよ。
 俺たちの時代は、男ばかりのスリーマンセルの班だったから、下手をすれば意地の張り合いのオンパレードで、気が利かないことが多かった気がする。
 当然、任務の作戦もうまくはかどらないことの方が多かったっけ。


・・・・・うん。ゴメン。ちょっと思い出したもんだから。
 関係ないんだけどね。父さんが、あんなことになったのは。父さんは自分の意思で、あんなことをしてくれたわけだし・・・。





 ・・・・・・。
 ああ・・・やっぱり、父さんはすごいな。
 俺は、今の世の中で上忍にこそなったけど、父さんにはきっと適わないよ。

 だって・・・。
 八門遁甲を全門開き切ったら、こんな激痛が体中に走って意識を保つのがやっとだって言うのに・・・父さんはあの時、俺に優しく笑いかけながら逝ったじゃないか・・・。


 俺にはどうやら、無理みたいだよ。皆に笑いかけながら───なんて。
 だから、あの場から逃げて来たんだ。父さんに会いたかったから、ってコトもあるけど。
 この期に及んで、見苦しいな。でも、どうしても弟子たちには、いいところばかり見せたくってね。


 ───独りで逝くのは寂しくないのか? だって?


 う・・・む、正直、寂しくないといったらウソになるだろう。でも、これまでずっと、楽しく騒がしく生きてきたから、もう充分だって気がするよ。バランス取れてちょうどいいんじゃないのか?

 弟子のことも、心配はしてない。
 あいつらは、俺が伝えたいことをきちんと分かってくれた、と確信しているから。
 教えたいことも、全て教え切ったしな。あとは本人の努力次第。それを見届けられないのは、まあ・・・少し寂しいかも知れない。


 ───他に心残りはないのか、だって?


 俺は今まで、結構好き勝手に生きてきたからなあ。イヤ、人の道にはなるべく外れていないつもりだけど。忍としての任務を除いて、の話で。
 やりたいことをやり、言いたいことを言い、そこそこ青春を満喫して、まあ、少しは世の中の不条理に悩んだり怒ったりはしたものの、おおむね満足のいく一生だった、と思うぞ。

 きっとそのうち木ノ葉じゃ、語り草になるんじゃないのか? 俺ほど『忍らしくない忍』は、いなかったに違いないから───あいつとは、正反対だ。


 ───あいつ、って誰だ? だって?


 ・・・父さんも一度、会ってるはずだよ。俺がアカデミーの入学試験に落ちたのに、受かってると思い込んで『仲良くしてやって下さいね』って息子を俺たちに紹介していた、父親がいただろう?
 あの時紹介されてた、口元を布で覆っていた、子供の方だよ。ちょっと生意気そうな。

 あいつはあれから、俺たち同期の中でも群を抜いてどんどんどんどん出世していった。
 けどね、あいつ自身は色々大変な運命に巻き込まれていって、父親を亡くし、親友を亡くし、仲間も、そして師をも亡くして、次第に自分の身を顧みなくなってしまったんだ。


 ───あいつには、生きてる人間の声は・・・俺たちの声は、全く届いていなかった。


 イヤ、あいつの師匠が生きていた時はそうでもなかったけど。
 多分、大切な人たちを亡くしたその反動で、悔いる気持ちがデカ過ぎて、守りたいものを絶対守るんだ、って気持ちばかりが先走ってしまった、その名残だろう。

 同僚が、死に急いでる、って例えてたっけ。本当にそうだと思うよ。
 俺たちは皆、あいつを心配してた。けど、俺たちのそんな気持ちはあいつには通用しなくて、どうしようもなくて、歯がゆかった。


 だから俺は、せいぜい青春を謳歌しまくって、あいつに見せ付けてやったんだ。
 過去にとらわれてるのもいいが、今を楽しんだ方が何倍も有意義だぞ、ってな風に。

 ・・・・・・・あいつの目には、入っていなかったのかもしれないけどな・・・・・・。


 ───え? だったら今も、心残りがありまくりなんじゃないか、だって?


 ・・・確かに、ちょっと前だったらそうだったかもしれないな。

 でも今は───もう大丈夫だ、と、太鼓判を押せるよ。




 さっき、このところ忙しかったんだ、って言ってただろ? 父さん。

 実はね、今は戦争中なんだ。隠れ里が全部手を組まなきゃ世界が滅びてしまう、危機的な状況だったんだよ。木ノ葉も、砂も、他の隠れ里もそれこそ死に物狂いの総力戦がずっと、繰り広げられていた。

 そんな中であいつは、思いもよらない人間と再会を果たし、まあ色々あって、自分の気持ちとやっと折り合いをつけることが出来たんだ。

 さっき・・・あいつは笑っていたよ。自分の弟子たちが馬鹿やって子供じみた諍いをやらかしてるのを見て。
 何もかもを吹っ切った───そんな、今まで見たこともない笑顔を浮かべていたよ。

 結局、俺たちがしてた心配は要らぬお世話で、あいつの心の暗雲を取り去ることが出来たのは、この世でたった一人の人間だった、ってことさ。
 ・・・分かっていたことだけどな、最初から。


 だから───もう俺には、心残りなんかないんだよ、父さん。

 戦争も終わった。
 俺の弟子も、あいつも無事だった。
 俺の八門遁甲も、何とか時間稼ぎぐらいには役に立った。

 これ以上にない、ってくらいに、満足しているんだよ、俺は。



 ああ・・・今、脳内麻薬でも形成されてるのかね?
 こんなに血が滴って痛いはずなのに、あまり感じてないぞ、俺は。
 その代わり、体がダルい。重い。もう立ち上がるのも適わんな。



 父さん───心残りがない、ってさっき言ってたけど、1つだけあるにはあるんだ。

 けど、もうそれは適わない。だからもう願わない。

 こんな満身創痍の体では、もうどうしようもないんだ。だから。


 ───あいつと、熱いライバル勝負を、
心置きなく、もう一度───なんて・・・・・・・・。






 誰かが、耳元で、俺の名前を呼んでいるような気が、した。
 けれどもう、俺にはそれが誰の声なのか、判別することは適わない。

【終】

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※ここまで書いておいて、念のため。

 これは死にネタではありませんm(__)m

 イヤ、つい思いついちゃったもんだから、だらだらと書き連ねたって言うか・・・。
 日頃あんまりこういう暗い文章書かない、なるべく前向きを目指してる(ガイ先生みたいv) ち☆ ですが、たまーに鬱モードに入るという。
 それがたまたま今回だった、ってことです、ハイ。(コンメインの話「いつか来たる結末、されど遠い未来であれ」の際も言ってたな、似たようなこと)

特に今回、人名入れませんでしたけど、誰が誰かはわかりますよ・・・ね??
分からなかったら困るから、一応解説を。


○上忍になった弟子・・・ネジ
○落ちこぼれだった中忍・・・リー
○潤滑油な女の子・・・テンテン
○正反対なあいつ・・・カカシ
○死に急いでいると評した同僚・・・アニメの紅
○思いもよらぬ再会した・・・オビト
○馬鹿やってる弟子・・・未来捏造・ナルトとサスケ(サクラも?)


 ついでに言うならば、ち☆ はネジのアレは未だにどうにも納得できてません。
けど、理性的に考えたら、蘇生は無理っぽいぞーと。だからこういう形になってしまいましたが、ネジ生還派です、これでも。

 何かねえ、精神のほとんどが少年漫画どっぷりなのに、たまーにドラマチックな少女マンガにあこがれたりしちゃったりするんですよ。で、こういうのを書いちゃう、と。
 ・・・だって、ねえ? これって少女マンガっぽいでしょ(^^;;;)


 これで死にネタじゃない、ってのは、実は続きの話があるから、なんです。
 ただし、流れ的に続きなんであって、話的には視点が違ったりして、感じが異なる印象になる予定です。念のため、




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