moonshine  エミ




2003年01月04日(土)  『マイノリティ・リポート』 世界を支配する目

 こんなに寒いのに雪まで降ってるのに、やっぱり天神は人が多い。
 バーゲン中のファッションビルを覗いてみるも、すごい混雑。
「ああ、私にはこの中から気に入ったものを見つける情熱は、ないな」
 と、すごすご退却。

 天神東宝にて、『マイノリティ・リポート』を見る。しんちゃんと。
 前売りペア券を、安く手に入る友達から融通してもらっていたのでした。
 
「最初の30分に集中すべし」
 テレビでおすぎが言ったというその言葉を胸に、スクリーンにかぶりつく(あの、比喩です。)
 どきどき続きの2時間ちょっとなので、伏線を心に刻む余裕もなかなかない。
 とにかく興奮に集中(って変な言葉だな)。

 エンタテイメント超大作、と呼ぶにふさわしい。
 二段落構成のストーリーでは、適度に見る者の予想を裏切りもし、
 適度にカタルシスを途中にも織り込みもし、飽きさせない。

 スマートでわくわくさせる未来の機械や車といった小物設定、
(でも、警察が乗るカタツムリみたいな空飛ぶ乗り物だけ、ダサいの。
 なんで?わざと?)

 追い詰められ苦悩する姿も絵になる、
 でもむちゃくちゃに強い主人公トム・クルーズ、

 どこまで人格があるのかイマイチ分かんないけど、
 なんとなく人間ばなれしてる感じで震撼させる「プリコグ」の設定、

「いやー、そりゃー、さすがに無理やろ」 
 とどうしても突っ込みたくなる、
 でもそこまでやってくれないと面白くない、っていう超人アクションで、 理屈なんて関係なしにハラハラ、スカッとさせつつも、
 ちゃんと観客に対して問題提起がしてあって、 
 物語全体がひとつの寓話でもある。
 
 見終わったあと、しん氏と記憶をさぐりあって、キメ細やかな伏線を確認したりした。
 こういう反芻作業が好きな私である(笑)
 
 目。
 とにかく「目」ですよ。この作品のキーワード。
 映画の中の未来では、網膜走査によってセキュリティ管理が完璧になされ、
 『プリコグ』と呼ばれる予知能力者が抱くイメージをも
 可視化するシステムをつくって犯罪防止が行われてる。
 目によって人々は安全と快適を享受し、 
 目によって管理される。
 映像ファイルとわかっていながらも、
 そのときだけは目に映る死んだ息子の姿を繰り返し見ずにはいられない。
 両ほうの目がない覚醒剤のディーラーは言う、
「片目の者が王者になる」、その意味。
 そして人間の目は錯覚する。
 いつでも完璧に、ありのままを正しく判断できるわけではない。

 この映画、いつごろから構想を練られて、どういう順番でつくられていったか知らないけど、
「アメリカの正義」「世界の覇者、警察官アメリカ」
 なんて感じがなかったのがよかった。
 タイトルからして『マイノリティ・リポート』だ。
 少数の報告、
 小さいから数が少ないから見逃され、
 あるいは見落とされるように「故意に」仕向けられているもの。
 どう扱っていますか、それを?
 どう扱うべきですか?
 ジェットコースターに乗ってるみたいに、
 何も考えずにただハラハラドキドキさせるハリウッド特有のスケール、スピードで楽しませるこの映画に、
 スピルバーグがそういう反骨精神をちょっと込めて・・・
 いたりするのかな。
 それとも「そういう精神性をも表現する監督」と思わせることこそが、  作戦かいな。
 まあどっちでもいい。
 手ごたえのある映画だった!!

 正月から大繁盛、
 本年の隆盛も約束されたような「あ・うん」一族
(福岡にそういう居酒屋の一派があるのです。)のお安いほう、 
「ぬくぬく屋」にて、しんちゃんと新年の盃。
 帰りは、雪をかぶった道を、そろりそろりと踏みしめて歩いた。





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