500文字のスポーツコラム(平日更新)
密かにスポーツライターを目指す「でんちゅ」の500字コラムです。

2001年10月24日(水) 新庄’s ドリーム

 去年の秋、新庄剛志は悩んでいた。FA権を得た彼は数球団と交渉に臨んだ。阪神は彼を引き留めるために総額10億円とも言われる複数年契約を提示。しかし彼はその条件に背を向け、年俸わずか20万ドル(約2400万円)のメッツを選んだ。
 誰もがあっと驚き、ある者は嘲笑した。「通用するわけがない」…と。そんな評価に対して彼は「プレーで証明する」と敢然と言い放ち、見事この賭けに勝った。
ある意味、彼はイチロー以上に「夢」を掴んだのかも知れない。7年連続首位打者で、パ・リーグ球団に居ながらステータスを勝ち得ていたイチローに対し、新庄は所詮、関西のローカルヒーローに過ぎなかった。それが、渡米して言動がにわかに注目を集めると、いつの間にか日本中から愛される存在になっていた。更に時には4番も任されたクラッチヒッター(チャンスに強い打者)には来季、出来高込みの135万ドルの契約が用意されているという。
 彼の成功は他の日本人選手のメジャー挑戦の呼び水になるだろうか。私はむしろ「新庄より成績が下だったらどうしよう」と尻込みする選手がいるのではないかと思う。それ位今年の彼は眩しく輝いていた。


あえて言おう。負けてよかったと(10/24)

 マリナーズが敗れ、イチロー・佐々木のシーズンは終わった。でも私は悔しい反面、どこか「これでよかった」という気もしている。イチローは今年、「そこそこやるだろう」という好意的な予想さえはるかに凌駕する活躍を見せ、数々の記録と2つのビッグタイトルを手にした。さらにMVPという声もある中ワールドシリーズにまで出てしまったら、来季は一体何を楽しみにしたらいいのだろう。そう考えると、今年はここまででいいと思えるのだ。それに悲惨なテロに打ちひしがれるNYの人々にとっても…。
 今シーズン最後の1球がサヨナラ被弾という結果に終わった佐々木は言う。「日本に帰って、悔しさが残っているうちに体を動かします」と。イチローも同じだろう。あっさり1年目で全てを成し遂げてしまうサクセスストーリーより、雪辱に燃える物語の方が日本人的ではないか。


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