2001年9月30日。この日は、日本プロ野球の命日として歴史に刻まれるかも知れない。 福岡で行われたダイエーVS近鉄戦で、年間ホームラン日本記録のかかったローズが、現記録保持者・王貞治率いるダイエー投手陣から四球攻めにあったのだ。かつてセ・リーグでバース相手に行なわれた「記録つぶし」の悪夢がまた繰り返された。 前日の29日、私は千葉マリンでのロッテ戦を観戦したが、ローズに対しては両チームの応援席から分け隔てなく拍手が送られ、球場全体が記録への期待に満ち溢れていた。観客は記録に向けた勝負に金を払ったと言ってもいい。「お客さんに失礼や。ああいう事するから日本の野球はだめなんや」という四球攻めに対する中村紀の言葉は正論だ。 今回の行為は「八百長」的暴挙である。プロ野球協約の趣旨に反するし、ファンへの裏切り行為でもある。これに対して観客は料金の払い戻しを求めて当然だし、リーグ会長やコミッショナーは、八百長に関わった者全てに対し数シーズンの資格停止など、厳しい処分を課すべきだ。でないと、近鉄の劇的な優勝で息を吹き返しかけたプロ野球が、本当に死んでしまう。
記録の値打ち(10/1)
大リーグではB・ボンズがマグワイヤの年間70本塁打の記録を更新しそうだ。片や日本では、暴挙によって記録更新の芽が摘まれようとしている。日本選手のメジャー移籍でプロ野球の「空洞化」が危惧されているが、これではメジャーに憧れる選手が増えるのも止むをえまい。そもそもファンを無視しておいて、「プロ」を名乗るのさえおこがましい。 王の記録はもはや、倒産した一流企業の株券同様、紙切れほどの値打ちもない。汚い手を使って記録を潰すのは、名誉を守る事ではなく汚す事だ。サラリーマン社会さながらの「上司へのゴマスリ」野球など、わざわざ金を払って見る価値もない。 近鉄のアドバイザーのラソーダ氏は「子供を大事にしなさい」と言う。子供たちが大人になった時、またその子供たちを連れて来てくれるから、と。でも、見苦しい四球攻めを見たスタンドの子供たちの何人が、「また来よう」と思うだろうか。
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