快賊日記「funnyface」

2001年10月04日(木) 地獄に堕ちた勇者共

強者共が夢の後…今日もただおだやかに海はそこにある。
息をのむほどに激しい潮騒も、今は黙り込み…波は静かに足下を
くすぐるだけ。通り過ぎた夢と終わった過去。彼等はもういない。
生あるものすべてに終わりがあるように、彼等の旅にも終わりがある。
それはもちろん夢見るような終わりではなくて…
捕まった海賊達に待っているのは死刑という名の終わり。
そう、旅の終わりは人生の終わりを意味する。海賊とはそういう生き物。
もちろん助かる人間もいる。果てしなく続くと思われるような、
長い長い投獄生活。もちろんそこでの生活は最悪。
半分以上はそこで病死してしまうし、仮に出れたとしてもその時には
見るかげもないくらいやせ細ってしまっているのが常。
それでも生きて帰れるのだから。海賊船での夢物語を手に今度は
おだやかな生活をきっと送れるはず。もっとかしこいやり方は賄賂。
これはもう昔からの約束事みたいなもので、人間って欲深い動物だから
自分の欲を満たすために相手の欲を満たす事なんてすごく簡単で確実。
そうやって生きながらえる海賊達もいる。あれだけ死に対して
何も恐れてなかった男達も、やはりいざとなると違うようで…。
こうやって必死で生き残ろうとする奴らもいたらしい。
しかし腐っても彼等は海賊。たくさんの人々を恐怖に陥れ、悪行の
かぎりをつくし、死刑という脅し文句をあざ笑って来た男達。
死に際だって派手に格好良く散ってみせます。
辞世の句っていうのかな?日本の武士達は死に際に辞世の句を詠む習慣
みたいのがあったけど、海賊達のは何ていうんだろう?
とにかく処刑される前、大勢の人々の前で最後の悪態をつくわけです。
どんな事言ったんだろう?でも好き放題して生きてきた奴らだもん。
きっと最後も自分勝手に言って死んで行ったんだろうな。
「そうだ。愉快に短く暮らすってぇのが、俺のモットーだ」
バーソロミュー・ソバーツはそう語る。きっとその時も同じ。
派手な格好で現れて、自分のぶんどった宝を大げさにばらまいて、
そしてニヤリと口元をゆるませて…同じ言葉をはいたに違いない。
そして…「斬ッ!!」…大きな音と共に命を結ぶ紐が切られ、
男の体は宙に舞う。踊ってるみたいに揺れて…やがて静かになる。
そして静寂。長い長い静寂が訪れる。たくさんの男達の命をすって
涙をすって血を洗い流して、そしてたくさんの男達の夢と浪漫を
飲み込んで、海は今日もただおだやかにそこにある。
海は永遠に変わらない。ただ黙ってすべてを見てるだけ。
笑えないほどの悪行と、笑いが止まらない程の自由を手にして
彼等は海を走り続けた。そして幕が閉じて去って行った。ただそれだけ。
…強者共が夢の後…彼等は地獄に堕ちた勇者共。夢は未だ波に預けたまま…。


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