悪臭が漂う船に閉じ込められた状態が何ヶ月も続くと、 海賊達は陸での生活が無性に恋しくなる。 自分でそういう生活を選んだにも関わらず、相変わらず彼等は 我が儘だったりする。もちろん港に到着する頃には、欲しい物は 何でも手に入るほど豊かになっている…今足りないのはこの欲を満たす物。 町に着けば戦利品はそのまま酒・女・博打に姿を変えて行く。 その額は牧場が一つまるまる変えるほどのものだったとか。 彼等が海賊になった理由…それはもちろん宝を得たいから。 でもその得た宝を残そうとか、何かに使うために取っておくなんて事には 一切興味なし。彼等が欲しいのはあえて言うなら一瞬の輝きのようなもの。 それは宝でも自由でも力でも、そして命でも。 だから彼等は残る物を持たない。陸で使う金も明日に残さない。 酒も女も博打も一瞬の夢のように消えて行く。 だから楽しい。だから価値がある。明日になればまた次の長旅のために 船を修理し、水代わりのビールとラムを買い込み、長持ちする食料を 積み込んで行く。そう、どうせ明日も分からない人生。 だからこそ命を懸けるのかもしれない。見るのは一瞬の夢がいい。 だからこそ強欲にそれを求めるのかもしれない。 はかない物ほど美しいと言う事なのか…でもだからこそ彼等は必死で 生きようとする。一瞬を大事にするからこそ、その一瞬を 何度でも欲する。彼等の船上での生活は実はかなり規律正しい。 陸での贅沢さや、敵への残酷さが嘘のように、平等で質素。 それはきっと彼等が生きるために生きているから。 長くは続かないこの生活を、自分の求めた自由や夢でどれだけ うめつくす事が出来るのか…。 過酷な船の生活では、その半分の命が海のもずくとなって消えてしまう らしい。たとえば生き延びても安住の地なんて彼等にはなくて… 「よし、危険な自由を共にする仲間達よ。今日も必死に生きようぜ。 そうすりゃまた一つ、いい夢が俺達を迎えてくれる」 そんなはた迷惑な志しを胸に、もう少し…彼等は人生を謳歌します。
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