快賊日記「funnyface」

2001年09月30日(日) 明日に向かって撃て

悪臭が漂う船に閉じ込められた状態が何ヶ月も続くと、
海賊達は陸での生活が無性に恋しくなる。
自分でそういう生活を選んだにも関わらず、相変わらず彼等は
我が儘だったりする。もちろん港に到着する頃には、欲しい物は
何でも手に入るほど豊かになっている…今足りないのはこの欲を満たす物。
町に着けば戦利品はそのまま酒・女・博打に姿を変えて行く。
その額は牧場が一つまるまる変えるほどのものだったとか。
彼等が海賊になった理由…それはもちろん宝を得たいから。
でもその得た宝を残そうとか、何かに使うために取っておくなんて事には
一切興味なし。彼等が欲しいのはあえて言うなら一瞬の輝きのようなもの。
それは宝でも自由でも力でも、そして命でも。
だから彼等は残る物を持たない。陸で使う金も明日に残さない。
酒も女も博打も一瞬の夢のように消えて行く。
だから楽しい。だから価値がある。明日になればまた次の長旅のために
船を修理し、水代わりのビールとラムを買い込み、長持ちする食料を
積み込んで行く。そう、どうせ明日も分からない人生。
だからこそ命を懸けるのかもしれない。見るのは一瞬の夢がいい。
だからこそ強欲にそれを求めるのかもしれない。
はかない物ほど美しいと言う事なのか…でもだからこそ彼等は必死で
生きようとする。一瞬を大事にするからこそ、その一瞬を
何度でも欲する。彼等の船上での生活は実はかなり規律正しい。
陸での贅沢さや、敵への残酷さが嘘のように、平等で質素。
それはきっと彼等が生きるために生きているから。
長くは続かないこの生活を、自分の求めた自由や夢でどれだけ
うめつくす事が出来るのか…。
過酷な船の生活では、その半分の命が海のもずくとなって消えてしまう
らしい。たとえば生き延びても安住の地なんて彼等にはなくて…
「よし、危険な自由を共にする仲間達よ。今日も必死に生きようぜ。
そうすりゃまた一つ、いい夢が俺達を迎えてくれる」
そんなはた迷惑な志しを胸に、もう少し…彼等は人生を謳歌します。


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