自分で自分の背中に自由に湿布を貼れる柔軟性を切望する衛澤です御機嫌よう。
昨年のことに、思わぬ通行区分違反をして青切符を切られてしまいました。とても細いけれど普段から自動車なんかもよく通っていて、だから通ってもいいものだと思っていた道です。そこを原付単車で通ったらば或る日警察官に呼び止められまして「ここは通ったら駄目ですよ」と言われたのでした。
「通っちゃ駄目」の標識が出てただろうって? 道路標識ってどうしていつもあんなに見えにくい場所に付いてるんだろう。そこに道路標識があることすらそのときまで知りませんでした。
その場で青切符と違反金納付書を貰ったものの、経済的理由で違反金は支払うことができず、そのままになっていました。お金がない訳です。
それから季節が2回変わった先日、警察署に呼び出されました。
そこでも違反金を払うようにと言われましたが、やっぱりお金はなくて払えません。分納だったら何とか払えなくもないのでそうさせてくださいと申し出たのですが、「それはできない」の一点張りで、「いままでも払えなくてたったいまも払えないのならこれからも払えないだろうから、裁判を受けるように」と葉書を渡されました。
赤い色で「お金がなくとも出頭すること」とか書かれてたり。手書きでなく印判ということは、しょっちゅう使用する文言なのでしょうね。
そういった訳で本日、簡易裁判所に出頭して裁かれてきました。
当地方の裁判所の場合は地下1階に交通事件を扱う部署がありまして、必要な機関が「待合室」と名の付いた部屋の周囲に集まっています。
1番の窓口は警察です。そこに警察署で貰った葉書を提出して番号札(受付順)を貰います。
次に呼び出される2番と番号が振られた部屋は検察庁です。その部屋で事情聴取をされます。青切符を切られるに至った状況と違反内容について検察官が説明して、「間違いありませんか?」と問われます。異議があれば申し立てることができます。異議なしだったので、そのまま書類だけが簡易裁判所にまわされて審議される簡易裁判を受けることになりました。異議があって出頭者(交通違反をしたと見なされている人)がそのように望めば簡易ではなく本式裁判を受けることもできます。
異議がない場合は書類に署名をして裁判終了を待ちます。署名とともに違反金を支払わなかった理由も書きます。私の場合は「お金がないため」です。そう書きました。
ほかにも裁判所に呼び出された人が何人かおられまして、同じ待合室で待っていたのですが、ほかの人はどんどん処分が決まって(みんな罰金刑確定)、6〜7万円の罰金を支払って帰って行きます。みんなお金持ちだなあ。私よりあとに受付された人も帰ってしまいました。私の処分が決まったのは受付から1時間くらい経ってからでした。
処分が決まると3番の窓口(裁判所)から略式命令書が渡されます。
私も罰金刑が確定です。罰金は5000円。違反金と同じ額です。これを裁判所窓口の隣りにある罰金支払い用の窓口で支払ってしまえば処分はお終いです。
しかし、いま5000円を「はいよ」とカジュアルに支払えるくらいなら、罰金ではなくまだ違反金であった頃に既に支払っております。
略式命令書を支払い窓口に提出すると「いま払えますか?」と訊いてくれます。私は「払えません」と答えました。「(銀行で)おろしてきて貰っても……」と言われましたが「おろしに行ってもありません」と重ねました。
うそではありません。
私には耳を揃えて支払えるような5000円などありません。だから警察署でも分納させてくれと言ったのです。
「おろしに行ってもありません」と言ったとき、窓口のお姉さんが数瞬、沈黙しました。たった5000円が銀行口座にすらない貧しさが、想像できなかったのだと思います。まともに働いてお金が貰えている人には判らないだろうなあ、普通には働けない者の生活なんて。
ちなんで言えば現在の財布の中身は94円だし、1箇月分の食費は毎月4200円程度です。5000円を一括で払おうとするなら、各種支払いの何か一つを止めるか、1箇月間断食するか、何れかの方法を取らねばなりません。「ギリギリでいつも生きていたいから」などと望むまでもなくぎりぎりで生きるしかない人だって、このようにいるんですよ。
いま支払えない場合はもう一度2番の検察庁の部屋に入ることになります。
そこで言われることは「後日、納付書を郵送するので納付期限内に支払ってください」ということです。分納はできますかと訊ねましたがここでも「できません」の一点張り。これまでも分納させてくれと言ってきたけど認められなかったから支払えなかったのだと訴えてみましたが、「何とか期日までに(お金を)掻き集めてください」などと言われました。「それは借金しろということですか」と問うと「そうですね、ご家族とか友達から借りて、少しずつ返すようなかたちで……」という返答。
借金してでも支払えという取り立てよう。お国だってお金がないので必死です。
「期日までに支払われませんと労役場に行って貰うことになりますので、きちんと支払ってください」だそうです。労役場というのは、刑務所のことです。
略式命令書を見るとこう書かれています。
「被告人を罰金5000円に処する。
これを完納することができないときは金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。」
5000円だと、1日か。
いい機会だから労役させて貰おうかな。こんな機会はなかなかありません。いい経験になるかと思います。
調べてみたら、最寄りのいわゆる交通刑務所は兵庫県加古川市にあるのだそうです。そこまで行く交通費は出して貰えるのかしら。
なんてことを考えましたが、労役場収監より先に「資産差し押さえ」が来るのですね。そりゃそうだろうなあ。5000円ぽっちのために収監したら、収監者(私)の食事や管理にお金がかかってしまって完全に赤字ですからね。
何ごとも巧く行きません。銀行口座とか家財道具とか、持って行かれると非常に困ります。ないと困るものしかうちにはありません。貧しくて「あったらいいな」的なものなんて買えませんから。差し押さえは収監より困る。
取り敢えず来月分の食費を差し出して、少しずつ食べられるように小銭を掻き集めることにします。痩せたらラッキー。