「これ、観てください。」
一枚のDVDを差し出され、「はい、観ます」と受け取ってから五年経ってようやくそのDVDを観た衛澤です。実はその内容は別のところで見て知っていたのですが、もう一度観たくなるおもしろい内容で、そういえばこれのDVDをくれた人がいたよね、ということを思い出して、今日自宅で観た次第です。
このDVDの内容とは映画「
かもめ食堂」で、淡々としてしみじみとしたおかしみのあるこの映画が私は大好きなのですが、今日はもたいまさこさんが登場した辺りで(丁度半分くらい?)寝てしまっていました。早朝トレーニングを終えたあとで横になっていたら幾らおもしろいものを観ていても寝てしまうんですね(いま更)。
私は映画が好きなのですが、自宅から映画館が遠いとか懐がいつも寂しいとか持病の外出できない症状が出ていることがあるとか、さまざまな理由が重なって、あまり劇場で映画を観ることができません。見逃がした映画はDVDをレンタルして観たいのですが、店舗に出掛けなければならない&店舗に返却しに行かねばならないことが足枷になってなかなか観られません。
しかし、最近では大変便利なサービスがあって、「これ貸して」とインターネット上から申し込むとDVDが宅配されて、観終わったDVDは最寄りの郵便ポストに投函すればそれで返却は完了というもので、店舗まで行かなくていいのです。
こりゃーいいサービスだと思いつつなかなか手を出せず、三年越しくらいでようやくはじめて貸し出しの手続きをしました。ぐずぐずさせたら紀伊半島一かもしれません私は。
三枚貸して貰う手続きをした、うち一枚は「
めがね」という映画です。「かもめ食堂」のキャストとスタッフがほぼそのまま制作に携わった作品です。これもまた淡々としてしみじみとした映画で、多分一〇代や二〇代前半の人はつまんないんじゃないかという御話です。これも以前に別の場所で観たことがあって、もう一度観たいのです。
小林聡美さん、もたいまさこさんの独特の芝居の味や、荻上直子監督が撮る奇妙な均衡がいつも何処かにある画面が私は好きなのですが、同様に「かもめ食堂」、「めがね」に共通する「食べもの」も私は大好きなのです。
派手ではないけれど、きっとしみじみおいしくてお腹がいっぱいになりそうな食べものたち。「
LIFE」、「
シネマ食堂」などの著書があるフードスタイリスト飯島奈美さんが、食べものを、ごはんを、丁寧に丁寧に演出しています。食べることは生きることとはよく言われますが、食べることは「生活すること」でもあるのだと、「かもめ食堂」や「めがね」で私は感じました。毎日を営み、大切にすること。
私はこの二作を、タイのバンコクで初めて観たのでした。宿泊したホテルに置き土産としてDVDが残されていたのです。
二回めの性別適合手術を終えて予後を観察するために退院後、二週間ばかりバンコク市内に滞在したのですが、そのときに。淡々としみじみと穏やかに、異国で身体を切った貼ったしたばかりの私の胸に胃袋に、それ等映画はしみたのでした。
そして三年後、時限魔法のようにもう一度観たくなっているのです。