2005年11月04日(金) そう安くはない。
「御節料理如何ですか」という広告がうちにも入るようになりました。この「如何ですか」は勿論「召し上がりませんか」という意味ではなく「御購入を御願いします」と言っているのです。ふと見た広告に書いてあった御節料理の御値段は何と10500円〜(税・重箱込)。
「10500円」ではなく「10500円〜」ってところがミソ。上には上があるんである。
そもそも御節料理には、「台所で働く者を正月くらいは休ませよう」という意味と「正月に休みたければ年末に2倍以上働かなくてはならない」という教訓が込められている……とは、よく言われることです。先に挙げた「10500円」はこの「正月の台所の労働力」と「食材費」と「調理等の手間」、そして「正月に休めるという有難み」が含まれている訳です。
そう考えると「御節料理10500円」は決して高くはない、むしろ大変お安い価格と言えるのかもしれません。
しかし確かに、「手間が掛かった豪華な食事」ではあるものの、このように「安価に」購入できる御節料理は果たして「御馳走」なのか否かを考えてみると、どうもそうでないような気がします。
「御馳走」とは走りまわることです。大切な人においしいものを食べて貰おうと、よい食材を求めて馳せ、より巧く(旨く)調理するために奔走する、その心を以て「御馳走」と称するのです。旧年忙しくがんばった家族のため、自分のため、台所を守る者が懸命につくるのが御節料理です。
さて、たとえば、ひとり暮らしの独身貴族(死語)であるぼくなどが、清水の舞台から飛び降りてしまった気持ちで大枚を支払って買い求めた御節料理は、御馳走なのでしょうか。
どうなんだろうか、ねえ。
「金銭を沢山持つことが必ずしも豊かであるという訳ではない」という精神論というか理想論というか、そういうものが証明され得る場が表れる予感のようなものを感じます。
【今日の時折絶叫】
あんころもちがくいてーっ(声:市原悦子)