2003年10月16日(木)
初めてのもの、二度目のもの

生まれて初めて稲の鳴る音を聴いた。

今朝、周辺の風物を撮影しにカメラを持って散歩に出たときのことだ。毎年この時期になると鳴っているのだろうか?それとも、二日前の雨のせいで、しみ込んだ湿気が秋の陽射しで乾燥したためだったのか?とにかく稲は弾けるように鳴っていた。偶然ではなかった。どの田んぼでも何かおしゃべりするように鳴っていた。

こういう音楽はあらゆる騒音をかき消してしまう迫力を持っている。近くを車が通りすぎる。鳥が鳴いている。いくつかの田んぼでは、雨上がりを待っていたように稲刈りが始まっている。コンバインの低いエンジン音が遠くに聞こえる。それでも稲の実る音にはかなわない。かぎりなく沈黙に近い微小の音響が、秋晴れの空に高らかに響く。

発見はまだあった。コンクリートで固められた川幅約1mの用水路をどじょうが二匹泳いでいた。子供の頃、どじょうは小川にいるものだった。それがいつの間にかいなくなり、どうじょうはスーパーの魚売り場で見るものになった。そのどじょうが今目の前を泳いでいる。

日本がすこしづつ快復の方向へ向かっているような気がしてきた。


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