夜汽車の客となり、日本海を北上する。 県境の山を越えて、再び山国へ。
ヘッドフォンをつけて、ノートPCから音楽を聴く。 時代錯誤とも言えない、ポータブルとも言えないスタイル。
「黄昏のビギン」。 言わずと知れた、永六輔作詞、中村八大作曲、歌はちあきなおみである。 永六輔さんは文化人とかテレビやラジオのパーソナリティと評されるが、 その前に、偉大な作詞家なんである。
昭和の歌を残した人々がほとんどみな彼岸へ行ってしまった今日で、 ご存命であり、しかも、現在もリアルタイムで語りかけてくれることを、 嬉しいことだと思う。
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しみじみした後で、ハナ肇とCrazy Cats。 お馬鹿な歌が、PCから私の聴覚にのみ出力される。
もしも何かのひょうしにヘッドフォンのコードがPCからすっぽ抜けたりしたら、 相当な音量で「♪そんなこたどうでも!い〜じゃねえか!」とか、 「さば言うなコノヤロ〜!」なんていうのが、静まり返った車内に響き渡ってしまう。
もう少し言うと、出張帰りのスーツ姿のおばさんのPCから、である。
まずい。 ジャックの部分を手で押さえ、絶対にその手を離さないよう注意し続ける。
こんな状況に置かれた者でなければわからないことだけれど、 今の時代に公衆の面前でクレイジーキャッツの歌を聴くというのは、 猛烈に背徳感を感じるんである。
何しろこの狂った猫達の歌は、 コンプライアンスとか、安心安全とか、絆だとかいう、砂糖菓子のような約束を、 ラッパを吹き鳴らして根こそぎなぎ倒していくからだ。
2007年05月27日(日) お受験母 2006年05月27日(土) 2005年05月27日(金) 梅涼 2004年05月27日(木) 適正表示
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