2010年07月11日(日) |
焚き火に放り込まれた実 |
ラジオで、はやぶさ帰還に関する話題。
4つのエンジンを連携させるクロス運転システムは、技術者の「何気ない」配慮だったそうであるが、これが帰還の決め手となったのである。
ここで私は、妖怪「覚(さとり)」のエピソードを思い出す。
猟師の焚き火の傍へ現れて、心の中で思っていることを次々に言い当てる妖怪の話である。
妖怪の出現に気味悪い思いをかかえながら猟師が何気なく焚き火へ放り込んだ実が焚き火で爆ぜ、それに驚いた覚が、「人間とは思ってもいないことをする恐ろしい生き物だ」と言い捨てて姿を消す、という結末に終わるのである。
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クロス運転システムは、まさに現代の「焚き火に放り込まれた実」である。
何もかもが顕在化し、計画され、組織化されたとしても、 それが人の世である以上、必ず、人が自覚しないままの行動が存在するし、 緻密な計算で予想できない結果は生じるのだ。それが良いことであっても、また悪いことであっても。
そうだから、現代の私達にもまだ、何者かに向かって祈る余地がある。
ハヤブサのプロジェクトマネージャーである川口淳一朗氏も、きっとそうだと仰るだろう。
2006年07月11日(火) 2004年07月11日(日)
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