鳩山由紀夫首相が国連気候変動首脳会合(気候変動サミット)で表明した2020年までに1990年比で25%削減を目指す温暖化ガスの中期目標は、国内外に政権交代を印象づける「第一声」となった。厳しい目標設定で産業界や米中など主要国との調整のハードルもその分高くなる。というニュース。
キャノンの御手洗会長は、さぞや苦虫を噛み潰したような顔をしていることだろう。
*
どうして国内に山積する環境問題にふれずに、地球環境問題への対応にばかり奔走するのか、と常々思っていたら、同じように言う人がいた。 環境省のマンパワーがここに偏りすぎて、国内の問題がなかなかすすまない、という言葉に、我が意を得た思い。
*
企業の経済活動と環境配慮は、国内では次のステージに向かおうとしている。 私はそう思う。
環境省と経済産業省の真っ向勝負である。
*
2008年に成立した生物多様性基本法では、生物多様性に配慮した事業活動の促進を企業の責務と明記している。 企業がトンボやメダカに対して一体なにができるというのだ、と思っていたが、ある時はっと思い至った。
どうもこれは−色々な情報を総合して私が想像するに−、環境基準の見直しを念頭においているのではないだろうか。
*
環境基準は、大気や水質、土壌などに関して設定された有害物質の管理目標値で、そのだいたい十倍が、企業等が守らねばならない排出基準となっている。
排出基準は健康項目と生活環境項目に分かれていて、健康項目とは、人が健康を害さない−死なない−程度に、有害物質の排出を抑えなさいよ、とされている。つまり、人間以外の生き物がどうなるかは、保障されていないのである。 人間以外の生き物については、生活環境項目、という基準で管理されているのだけれど、ここへ最近、新しい規制対象物質の追加がされるなどの動きがある。
最初の話にもどると、件の法律に「生物多様性に配慮した事業活動」と明記されているのは、とどのつまり、この生活環境項目や基準値を強化しますよ、という宣言なのではないか、と思うのである。
言いかえれば、環境省が企業の責務として期待していることは、海のゴミを拾いますとか、森に植林をしますとか、子どもに環境教育を施します、というようなボランタリーな活動のことではなく−少なくとも本丸はそこではない、という意味で−、今までどおりの操業はできなくなりますよ、という痛みの伴う変化を要求しているのではないかと思う。
消費者だって、消費生活の然るべき変化を迫られるかもしれない。
*
それにしても、国の政策理念というのは、見事なまでに真綿にくるまれている。 極めて現実的で厳しい内容を狙いとしてもっているのに、それをはっきり言わないのは、 頭の良い人が考える、スマートでずるいやり方だなあと思う。 ひがみっぽく言えば、これで分からないならお前の能力不足だ、という態度が感じられる。
例えそれが、生物多様性を回復するという、何か響きの良いことであっても、国家の計画性という冷徹な側面が浮かび上がる。
2005年09月28日(水) あきらめ 2004年09月28日(火) 声と花
|