仕事の緊張感をもってして、人と会う。 実に久しぶりなことである。
帰りがけに、加山又造展。
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自分の精神世界を余すことなく投影するのが、芸術作品だと思っている。 だから、それを歩留まり高く作品に投影することができる芸術家の、 その作品を通しで鑑賞することは、意味深い。
挑戦的である青年期、試行錯誤のもとに新たな境地を開く壮年期、 気負いなく、晴れ晴れとしている老年期。
鑑賞者の私は、ほんの2時間か3時間、生涯を通した作品と向き合うだけで、 何だか一生を生きたような気分になってしまう。
屏風絵や銅版画なんかの、いずれの作品も、この作家がある時期に放った、 密度の濃い時間とエネルギー−思いと言ってもよいのかもしれない−が詰まっていて、 それが生々しいほどに匂い立つ。 人の思いというのは、物理を越えて存在する。
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そして、幾人かの芸術家がそうであるように、 この人も、終戦直後の作品は、絶望的に暗い。 生き残ってしまった罪悪感のようなものに満ちている。
2005年05月10日(火) 夢ログ 2004年05月10日(月) 命の著作権
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