白樺湖の少し先にある、女神湖という湖の近くで仕事。 亜高山帯は久しぶりだ。 山腹の下からわき上がってくるひんやりした空気。 サラサドウダンの花やヒバリ。
帰りはビーナスラインが早いですよと一緒に行ったA君が言うので、 通勤道に亜高山帯を通る後ろめたさを感じつつ、そうしてみる。
数年前に無料化されたこの観光道路は、開発時に環境保護問題でかなり物議をかもした。新田次郎の小説「霧の子孫たち」の舞台である。 確かに、よくもまあこんな標高2000m近いところに道を作ったものだと思う−その道を通って家路をたどる自分には説得力ゼロであるけれど−。
キスゲの花が一面に咲くぼんやりした夕暮れのなか、ゆるやかにカーブする観光道路をゆく。 「高いところが広い」という高原というのは何だか不思議な地形現象だ。 根拠なく宙に浮いているように、いいのだろうかという思いがつきまとう。
それはやはりよくはなくて、峠を過ぎたあたりからものすごい下り道のツケを払わされた。 「これがなくては俗界と天上界のしめしがつかない」とでも言わんばかりの標高差を、軽い頭痛とともに味わったのであった。
|