聞けば、これまでにない落語ブームなのだそうである。 噺家の数も、「供給過剰」と言われるほどに多いのらしい。
人々は落語を、現代の「話し方教室」として消費している。そう解釈する。
熊さん八っあんがやるような細やかな会話やコミュニケーションを、 人をたしなめる時はどういったら言いか、 人を誘いたい時はどうもちかければいいか、 嫌な相手を断る時はどう言ったらいいか、 何しろ噺家先生が身振り手振りでお手本を示してくれるのだ。
そして、あたたかく共感する笑いを、人々は求めている。
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コミュニケーションとよぶまでもない、ただの「声かけ」や「挨拶」ですら、 私たちはすっかりやらなくなり、「お世話になります」なんて意味のない業務用挨拶しかできなくなってしまった。
でも、掲示板やチャットでできている見知らぬ人との会話が、生身でできないわけがない。ただちょっと、そのやり方と感覚を忘れてしまっただけだ。
落語でも狂言でも歌舞伎でも、芝居でもいい。 本当に細やかな会話と、人様に対する情けを学習することができる。 下卑た笑いやいじめの場面をよしとするテレビ番組制作者には特に、 娯楽と健全は両立するということを学んでほしい。
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