仕事で行った先で入手した「奥多摩飴」。発売元奥多摩工業(株)とある。土産物にそぐわないこの発売元は、この地で石灰石採掘をしている企業なのだ。奥多摩の道や鉄道なんかのインフラは、この石灰石を運び出すために整備されたものが多い。
だからこの奥多摩飴にも石灰が入っている。「手造り炭酸カルシウム入り」と表示されたパッケージはそっけなく「別に造りたくてつくってる訳じゃないんだけどね」とでもいいたさそうだ。
青い透明な飴を口から入れたり出して眺めるAに、こんな按配で法螺話。
「…奥多摩という処には飴でできた青い大きな岩山があり、「梵天岩」とよばれている。(注:梵天岩は実在)日原集落の屈強な男達は−ここで取材撮影したKさんの写真を見せる−一攫千金を狙い「飴取り」をする飴ハンター達である。ハンマーのような道具でガーンガーンと削りとった飴塊を背負子に入れ急峻な山を下りる。それを小さくして売っているのが奥多摩飴。」
Hがジェスチャーで、嘘嘘とやっている。 しかしAは神妙な顔つきで、ふーん、とうなづく。
からかうつもりの自分さえ、蒼い飴のエルドラドが浮かんできて、さらに 「お母さん見てきたんだけどね、雨が降ると飴の山が溶けて、傍の川が飴の味になるんだよ」とまでふかす。
Aは、その川の水は一体どんな味だろう、ということで頭の中がいっぱいの様子。 私も、緑濃く深い森を流れる「炭酸カルシウム入りの蒼い川」は、一体どんなだろうと想像する。
2004年05月31日(月) 自給自足
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