HとAは、出かけてしまって明日まで帰ってこない。
普段なら中断せざるを得ない、夕方の時間を気にせず仕事を続け、 区切りのよいところで、風呂屋に行き、いつもよりゆっくり温まる。 手足に入念なマッサージなどをしてみたところで、楽しみに借りてきた 「ラストサムライ」と、北野武のほうの「座頭市」を、連続鑑賞。 特別そうしたわけではないけれど、どちらも殺陣もの。
北野武は、上手いなあと思いながら、ビールを飲む。 彼得意の、人情物の要素を取り入れたくだりでは、 見事にそのテクニックに引きずり込まれて、ひとり目頭を熱くする。 馬鹿馬鹿しい細工に、誰にともなくがははと笑う。 一同が大団円を喜ぶラストのタップダンスに、感心する。
全部見終わってふと気が付くと、一人で寂しくなった。 だから、今日はもう、さっさと寝てしまおうと布団を敷きながら、 正月もこういう日も、一日か二日あれば −一日か二日さえあれば− 残りの一年分は頑張れるなあ、と思うのだった。
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家族をもつ女の、こういう時間のありがたさは、おばさん的実感であるが、 もう少し上品に誤解のないように例えれば、 リンドバーグ夫人の「海からの贈り物」的心情、ともいえる。 DVDなんか観ているようではまだまだであるが。
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