2004年09月24日(金) |
リセエンヌの男料理世界 |
紅玉を大量に入手してあったので、ジャムを煮る。 ついでに大玉2つをとっておいて、冷蔵庫にあった ヨーグルトと小麦粉と卵で、定番にしているケーキを焼くことにした。
昨晩読んだ「修道院のレシピ」という本はよかったな、と思いながら粉をふるう。
この本はフランスのリセ、つまり修道院を母体とする女子高の、家庭科の教科書なのである。 リセは花嫁学校が前身だったことから、料理の授業など生活技術に関することを、結構きちっと教えるらしい。
フランス料理本といえばオーギュスト・エスコフィエの「ル・ギード・キュリネール」が有名だ。 フランス料理のバイブルとも言われているこの本もそうだと聞いているが、「Cours de Guisine」を原題とする、この女子高生向けに書かれた料理教本も、料理法が大変に体系的にまとめてあって、感心する。 単なるレシピ集ではない。料理体系本なのである。
例えば、ソース。 バターと小麦粉と水又はブイヨンと塩コショウで作るのが、ホワイトソース。 ホワイトソースの、水の代わりに牛乳を使ったものがベシャメルソース。 ホワイトソースの、水の代わりにムール貝のゆで汁を使ったものがムールソース。 ホワイトソースの、バターをよく焦がしてつくるのが、ソース・ブロンド。 ホワイトソースに、グリュイエル・チーズを加えたのがモルネ・ソース。 ホワイトソースに、トマトピュレを加えたのが、オーロラ・ソース。
そしてこれらのソースがベースとなって、ホワイトソースはさらに 二親等から三親等へ枝分かれしていくのである。非常に分かりやすい。
肉料理、魚料理、野菜料理なども、だいたいこんな感じで体系化されているし、煮詰め具合や焼き具合などの調理技術も、同じように体系化されている。
一つの料理世界が完結してあり、フランス文化の底力を感じてしまう。 またこういう風にまとめられた料理法というのは、大変男性的で私好みである。
このところ料理本を読んで料理するということに飽きていたのは、 ちょこちょこっと作ってみました、とか、自由な発想で、というレシピ集の風潮に、少し飽きていたのかもしれない、と思った。 久々に質実剛健な料理本を読んで、「調理の喜び」というのを思い出した。
温まったオーブンへケーキ皿を放り込みながら、 もし無国籍料理という分野で、このような新しい体系を完成させることができたら、世紀に残る文化的偉業だと思うのだけれど、誰かやらないんだろうか、クイーンアリスの石鍋シェフなどやるべきではないんだろうか、と、思った。
|