水難事故のニュースが、小さく紙面に出ている。
何年か前に、海水浴場で目撃したことがある。
遊泳禁止区域というのは、それなりに理由があるのであって、 潮の流れにとられてしまった小学生の女の子と男の子とその親が、 水平線の彼方へ見る見るうちに追いやられていった。
遠く波の間にまに見え隠れする、ごま粒のように小さな二つの頭が、 お兄ちゃんと妹のようであった。 当然浮き輪も何もつけていないはずで、 それでよく何分も浮いているものだと思った。水も相当冷たいはずだ。
まもなくレスキューに助けられた父親は、浜辺で号泣していた。 続いて救助されたお兄ちゃんは、震えていたが自分で立って歩いていた。 小さな妹は見えなくなって、浜辺の人々はみな目を凝らして 何分も何分も、水平線の彼方を探した。
姿を見失った妹の救出の目処が立たず、 もう帰ろう、と帰路につく途中、救急車とすれ違ったが、 既に死亡していた女の子を載せていたことは、翌朝の新聞で知った。
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何となく夏の風物詩のように取り上げられているが、 水の事故は、いや自然の災害とは、 実際は足がすくむほど恐ろしいのだと思う。
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