浅間日記

2004年04月05日(月) 病名告知

無事未遂に終わるも、スペインで再び爆破テロが発覚し、
電車での移動も生きた心地がしない中、日帰り上京。

駅前の駐車場は夜間閉鎖を知らせていた。
係員は駐車している車のナンバーを控えていた。
駅の構内は警察が警備に立ち、
乗り込んだ車内では、鉄道警察が見回りに来た。

国鉄時代の置き土産のような車掌が、車内で
水を得た魚のごとく高圧的な態度。
図に乗るなよ、の意を込めて、一瞥をくれる。

こういう時代だからこそ笑顔で対応するのが
本当のサービスというものだろうが、と思った瞬間に、
「こういう時代」などという言い回しをした自分に悲しくなった。
どういう時代だというのだ、と反問す。
戦前、という言葉より他に回答がないことを認め、
また心の底から悲しい気持ちになった。

余命いくばくもない病名の告知をされた瞬間は、
こういうものだろうか。

自分のいる世界は、既にひどい病魔におかされていて、
こういうものと対峙していかなければならない事実。
きっとこの悲しい気分は、車内から世の中へ蔓延していくのだろう。

車窓から見える、晴れ渡った空に白く輝く山々を見ても、
私は本当に、ただやるせないだけだった。



帰路。
すっかり疲れていた上に、行きと同じ心境になるのはもう嫌なので、
慰みに購入した泉鏡花の「天守物語」と「夜叉ヶ池」を車中にて読む。
幾分助けられた気持ちになる。

家に帰り着き、山から下りてくる冷気を吸い込み、
ふりそそぐ蒼い月の光を浴びて、
さらに、かなり回復する。

とにかく明日考えよう、明日だ。
ラストシーンの、スカーレット・オハラの心境だ。


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