2004年03月23日(火) |
頼むから静かにしてくれ |
事務所にて仕事。
六田登という漫画家の、「頼むから静かにしてくれ」という漫画。
死んでしまった天才レーサーに憑依され、 成績を上げる若い女レーサーの話。 「生きている人間は、沢山の死者とともにいる」という結末。 タイトルは、自分の内側で生き続ける死者達が賑やかしい様をいっている。
モータースポーツのマンガが、 こういう深みのある展開で結末を迎えるとは意外だった。 後半ぎりぎりまで面白コンテンツで若い読者を引きつけ、 最終回間際の数回で、タイトルに寄せた自身の思いを表現している。 優れた作家なのだなと思う。
これを読んで、 小林秀雄氏の名著「無常といふこと」を思い出した。 現代人は、室町時代の町娘ほどにも無常ということを判っていない、 と書いてあった。ような気がする。
現代社会は「今」に忙しすぎて、 ヒトから想像力や客観性を奪っている。 だから死者や、自分がいなくなった世界について なかなか考えが及ばないのだろう。
「死んだらオシマイよ」というのは結構カッコいい心構えだけど、 自分さえよければ後はいいと言っているようで貧しいと思う。 観光地でゴミをポイ捨てして、そのまま家に帰るような感じ。
自分の中の、沢山の死者を思う。 今でも自分を励まし時に軌道修正してくれる人がいる。 こういう存在の積み重ねで、自分の年輪が豊かになっていく。 自分なき、次の世代を思う。 先代にもらったものを、次代にも分けてあげたいと思う。 だから私は、出来る範囲で一生懸命子どもを育てる。
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