一週間在京。
家に戻ったら花冷えだ。 暖かかった冬の落とし前をつけるように、しんしんと雪が降る。
文芸春秋が、芥川賞の騒ぎの後夜祭のつもりか、 若手2人の受賞作品に対するコメント特集を組んでいる。
親にもらった体に傷をつけるなんて言語道断だ!とか、 こんなものは文学じゃない!と一喝している政治評論家もいた。 大した事ないと思ったらすごくよかった、 誤解していた自分を作者に謝りたいと記す女性アナウンサー。
色々な意味で微苦笑。 こりゃ、作品そのものを読むより面白い。
どうしてこんな特集をわざわざ読んだかと言うと、 義家弘介センセイが感想を寄稿していたからだ。 そしてやはり、素晴らしい感想を寄せていた。
彼は作品に対する感想なんか一行も書いていないのである。
ただひたすらに、「よく書いた!賞をもらってよかったな!頑張ったな!」と、若い作家へ、また背後にいる若い読者たちへ、 エールを送っているのである。自分らしく生きろ、と。
文芸春秋というメジャーな媒体におもねることなく、 芥川賞という権威に臆することもなく、 教育者としての自分の軸足を少しもずらさずに、 若者へ眼差しを向けられるこの人は、本当に先生なんだなあ。
こういう熱血先生を疎ましく思わずになったのは、 いい意味で自分が大人になったからかもしれない。
魑魅魍魎が跋扈する社会の中で、ひたすら熱血でいることが どんなに大変かわかるようになったということだ。
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