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遠い、昔ー
耳の奥に残る、低くてゆったりとした声。 まるで、静かに波打つ海のような音だ、と思った。
何かのきっかけで、人間は感情を手に入れた。
持ちうる全ての感覚を持って、脳へと記憶になり、 感じることが出来るようになった。
今までとは遥かに違う、世界が見えた。
けれど、それは人類にとってー
果たして、快挙だったと思うかい。
これを手に入れたことによってー
人間は、どの生物よりも苦悩することになったのかもしれない。
悩み、苦しむ。
誰かを信じる、ということ。
きみは、どういうことだと思う?
目に、見えるものだったら どれだけマシだったろうね。
けれど、それは触れることも 見ることも聞くことも叶わない。
ただ、感じるしかないんだ。
その人を、信じる。
ただ、信じる。
だけど、その人を信じようとした時ー
もし裏切られたら、と きみは、考えるかもしれない。
でも、その人を好きなら、
信じるしかないのだ、と
きみは考えるかもしれない。
不安だね。
きみは、怖いという感情に、悩まされるかもしれない。
きみが、眠っている間の世界は
きみが起きているときと同じように
モノや時間が動いていると、思うかい?
もしかしたら、目を瞑っている間に
きみの体は宙を浮いて
部屋やベッドやじゅうたんが
ぐるぐると回転をしているかもしれない。
そして、ゆっくりときみが目を覚ます頃には、 眠る前と同じ位置に全てが戻っているのかもしれない。
信じる、ということは、
きっと、目を瞑っていることと同じようなのかもしれない。
目を瞑って、
体温も香りも感じない 手も届かないような距離で
声を発することなく、相手が立っている
きっと、立っているのだ、と
思うことに似ているのかもしれない。
目を開けたときには、きっとそこに居るのだと 立っているのだと、思うこと。
それが、信じること、みたいなものなのかもしれない。
だから、不安なんだ。
だから、アンバランスなんだ。
信じよう、と心を決めていられる間は平気でも
一度猜疑心を抱けば
真っ暗の中
在るのかもわからない存在を 心に留めていようとしている
それが、不安になるかもしれない
もしなかったら、どうしよう
もし、だめだったら
もし、 もしー
信じることは、空虚かもしれない。 けれどー
でも、きみは
信じることが何かを、気づくんだよ
そのときが来たら、
気づくんだよ
信じることは、どういうことなのか
誰を
何を
信じようとしているのか
信じたいのか
しっかり、思い出すんだ。
遠い、昔ー
そう、まだ幼い私に
夢の中で伝えてくれた
あのときのアナタは、誰だったのでしょう。
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緩やかに流れる 波紋が
脳の奥底で
謡うように
揺れて
どっぷりと
柔らかくて 温い 水の中へと
沈んでいくような
手足の感覚は無くなって
目を開けても閉じても
同じ暗闇
心地よい 重さ 静けさ 温度 浮遊感
目が覚めたとき
嗚呼、醒めてしまった、と
残念に思う気持ちに 少しだけ笑う
いつか きっと
もう一度 あの世界へ
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