主人が可哀相な事になっている。
持病で、もうずっと薬を欠かせない生活を送っているのだが、医者がまた薬を減らそうと言い出したそうで。 この医者、1年半前にも薬を変えようと言い、結果主人が体調不良に陥り大変な目に遭ったのである。 そして今回、薬の種類を減らされた結果、主人はまた体調不良に陥ったのであった。 くそーあのジジイめ……と苦しい息の下から呪いの言葉を吐く主人に、 「ヨシヨシ可哀相に。でもね、お薬減らしますねーと言われてハイそうですかと言う事聞いちゃう貴方もどうかと思うの。以前もお薬変えられて痛い目を見たのだから、もしまた具合が悪くなったら困るから、念のためにいつものお薬も出して下さいって言えば良かったのよ」 と言ったら、彼は吃驚したような顔をした。 「シオン、賢いな……」 えっ、今頃判ったんですか。
医者にとっては、患者の痛みなど他人事。だから平気で同じ事を繰り返すのである。 しかし痛い目に遭った患者本人も何故繰り返して唯々諾々と従うのか、主人に対しても馬鹿かと言いたくなった妻であった。 病人相手にそんな判り切った事を言って追い討ちかけるのも憚られたので、そこで口は噤んでおいたが。 シオンがお薬貰って来てよと頼まれたが、減らされた前回とは違う処方になる訳だから自分で行って来いやという訳で、主人は忙しい仕事の合間を縫って、ふらふらになりながらも自力で行って来た様子。 薬が戻ってすぐに体調が戻る訳でもないので、この週末は自宅療養になるであろう。 またどこにも連れて行って貰えないのねー。
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