主人の携帯がもう寿命のようだ。 折り畳み式なのだが、畳んでいるとバイブが利かないので、着信があっても気付かない。 発信も通話も微妙で、何遍かけても繋がらない。 やっと繋がったと思うと今度は聞き取れない。 そしてブチッと切れる。
「これじゃ携帯電話の意味が無いから買い換えてよ!」 と私もブチッと切れた。 そもそも主人は携帯電話が嫌いな人間である。 いつでもどこでも呼び出されるのが嫌だと言う。 携帯を持つようになったきっかけも、「無いと出張で困るから」なので、携帯が無いと不安などと言う今時の若者の気持ちはさっぱり解らない。 それでも「次に買うのならスマートホン」と決めていたらしいのだが、今はまだ色々と不安要素があるから買い時じゃないなどと言う。 しかしそれではこっちが困るので、じゃあ繋ぎとしてやっすい携帯を買うか?と訊いたら、やっぱりスマホがいいと言う。 「でもまだ買い時じゃない。それに高いよ」 とブツクサ言うので、ループを起こす前に、じゃあスマホ買っちまいな!と私が後押しした。いや寧ろ清水の舞台から蹴り落としたと言うべきか。 ボーナス後じゃなかったら、清水の舞台はもっと高かったであろう。 私のを買い換えた時にも思ったけれど、なんでこんなに高いのさ、今時の携帯電話って。 必要最小限の機能だけでいいから、安くしてくれよ!と思う。 でも見た目も可愛くないと嫌。
4箇月前にこの店を訪れた時にはもっと沢山の携帯電話が並んでいた筈だが、驚くほど数が少なくなっていた。 数が減った上に、可愛い携帯電話となると、もう皆無である。 携帯電話はもう終焉を迎えて、時代はスマホなのか、時の流れは速いな……などとババアの気分に浸っていたら、可愛いまでは行かないが、一寸心動かされる色のスマホがあった。 ピンクのスマホ。これいい! これ買いなよ!と主人に勧めるも、えーピンクは嫌と即却下された。やっぱりそうか。 でも色違いのを購入する事に。 30分ほど待たされて、漸くカウンターの席に着いて、スマホを注文した。 しかし本当に高い。3月中に買えば1万円引きだったが、あの頃はこの防水タイプは未発売だったので仕方が無い。 最後に 「やっぱりピンクにしようよ。可愛いよ? この地味色だと後悔するよ、本当にいいの?」 と念を押したのだが、これがいいと言われてあっさり玉砕。 シャンパン色のスマホを買って帰った。
帰宅すると、主人は早速新しい玩具にかかりっきり。 仕方が無いので、夕食は私が作った。(仕方無いのかよ) 食後もずっと主人は玩具で遊んでいたので大人しかった。 「最早電話ではないな、これは」 と言いながら、あれこれ弄っている。 スケジュール管理の出来るアプリもダウンロードしたらしいので、今年はスケジュール管理能力が問われるポストになってしまったのに相変わらず手帳を持たない主人には、丁度いいかも知れない。スマホを使いこなして、頑張って出世して貰おう。 私も触らせて貰ったが、よくわからないながらも、未来の機械みたいで楽しい。 「いいなコレ。私はピンクのにしようっと」 「えっシオン、こないだ携帯買い換えたばっかりなのに、スマホ買うの!?」 「ううん、今は買わない。でも5年ぐらいしたらあのピンクのやつ買うんだー♪」 「5年も経ったら別なの出てるだろうよ……」
スマホは買ったものの、お店では携帯からのデータの移し替えをやって貰えなかった(安いんだからマイクロSDカード買って自分でやれよ、という意味の事を言われた。私だったら「判らないから嫌だ、こんだけ高い物を買うんだからそれぐらいサービスしてくれ」と食い下がるところだが、主人はあっさり引き下がっていた)ので、主人は前の携帯電話からちまちまと手作業でアドレスなどを入力していた。 しかしスマホはなかなか言う事を聞いてくれないらしく、隣のキーが反応して、入れたばかりのデータがパァになったりしていた。 うわあまた消えたーと嘆く主人に、 「やっぱり『スマート・ホン』だからさ、スマートじゃない人には向かないんじゃないの〜」 と酷い事を言う鬼嫁であった。 スマホには万歩計も入っているらしいから、頑張って痩せてね!
※反応が悪いのは、画面保護シールのせいという噂も。ずーっと貼ったままで使う私とは違って、主人はさっさと剥がして、入力が楽になったとと喜んでいた。
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