主人とショッピング・センターに行った。 似合う服を買って貰い、上機嫌でトイレから出て来ると、主人がお店の前で手招きした。 「シオン、こっちこっち!」 と言うのでなあに?と駆け寄ると、 「これ、聴いてご覧」 と店先のラジカセを指差した。 ?と思って耳を寄せると、男の声がなにやらぼそぼそと歌っている。
「シオンの歌に似ているでしょ。親近感湧いた?」 私の歌というのは、これまで私が作って主人に披露した自作自演ソングである。 3曲あるが、そのうちの1つに似ているというのだ。 前奏もシメも「ずんちゃずんちゃ」で済ませてしまうところや、緩いテンポ感まで。 確かに似ている。 「似ているけれど、親近感は湧かない。寧ろ、悔しい〜!」 「何が悔しいんだよ……」 「だって! 私の歌はこうやって、一般に披露する機会は無いんだもん! これだけ似ているのに!」 と私が悔しがると、主人は明らかに引いていた。 「でもシオン、似ているけれど、『麗しのももんちょ』の方が歌として成立しているよ。シオンの歌は精々8小節だけれど、ももんちょは16小節。これは曲として最低限必要な長さだ。つまり、ロドリゲス谷の方が、シオンより才能があるという事」 「何よ! 貴方は私の歌が気に入らないって言うの!? そこまで私の歌を貶すなんて酷過ぎる! 愛が無いわねっ」 私が気に入って作った主人のための歌を酷評され、一転、険悪ムードになってしまったのであった。
|