先日、クリスチャン・ツィマーマン(クリスティアン・ツィメルマン)のリサイタルを聴いて来た。 今年はショパン・イヤーという事もあり、「次はいつあるかわかりません!」(※後述)のオール・ショパン・プログラムだったので、ずっと前から楽しみにしていたのだ。 しかし転勤で演奏会場から遠い所に引っ越してしまったため、予定が立たずに券を買うのが出遅れたものの、悪くない席を買う事が出来た。 当日は早目に仕事を切り上げて来る事を主人に厳命し、遠路2人で会場へゴー。 中に入って吃驚、昨年は半分も入っていなかったのに、今年はほぼ満員御礼……チケット取れて良かったー! のだめ効果か、それとも単にショパンが昨年のシマノフスキーよりメジャーなだけか判らないが、こんなに人が入るとは。 昨年より人が多くて良かったと思うと同時に、これだけ人がいるとマナーの悪いのもいるんだろうなという不安も。 私の隣りは、年配のご婦人であったが、膝の上にスーパーのレジ袋を抱えていた。 少し身動きを取るだけでも、袋がわしゃわしゃ言うのだ。 これは、確実に鑑賞の妨げになる。 数年前、稲川淳二の怪談ナイトに行った時にも、女性客が持っていたスーパー袋が煩くて仕方なかった。 開演前に何とかしてくれるといいなあと思って静観していたが、チャイムが鳴ってもそのままだったので、私の堪忍袋の緒が切れた。 ツィマーマンを舞台に迎える拍手に紛れて、私はご婦人の耳元で、低い声で囁いた。 「音がしますから、その袋、椅子の下にお置きになった方が宜しいですよ」 ご婦人が素直にその通りにしてくれたので、ストレス無く演奏に集中する事が出来た。
演奏は、どれも素晴らしかった。 しょっぱなのノクターンから、ガンガン飛ばす飛ばす。 2曲目はソナタ2番、3楽章の「葬送」は超低速。レントを通り越していたが、あれぐらいが葬式っぽくていいのかも。 中間部の繰り返しの所で躊躇したように見えたのは、もしかして、リピート回数を忘れてしまったのだろうか。 スケルツォ2番では、あまりの美しさに中間部で泣きそうになった。 前半も後半も3連符が全く重ならない、濁らない正確さ。最後は怒涛のように駆け抜けて、脱線するんじゃないかと怖くなったけれど。 主人は、ムソルグスキーの展覧会の絵かと思うぐらい色彩的なショパンだった、と驚いていた。彼にとってショパンは白黒の世界らしいので。 拍手も凄かった。えっもう演奏会終わり?と一瞬思ってしまったほど。
休憩を挟んで後半は、ソナタ3番と舟歌。 どちらも大好きな曲で、演奏が終わってしまうのが惜しいぐらいだった。 ずっと聴いていたい。 今年もアンコールは無かったけれど、満足。 至福のひと時を過ごす事が出来て、付き合ってくれた主人にも感謝。 嗚呼もう本当に幸せ。聴きに来て良かった!
ロビーでCDやDVDの販売をしていたけれど、どれもこれも昔の演奏なのよね……。 これは是非、新しい録音を出して貰わないと!! お願いしますよ、ツィマーマン様。ライブも勿論いいけれど、そう毎度毎度聴きに来れる訳じゃないし、これは人類のためにも、後世に残さないと! という訳で、新しいCD発売を切に願うのであった。 出たら絶対買いますよ、私は。
※註釈「次はいつあるかわかりません!」 美輪明宏音楽会のCMで最後に流れていた、地元のTV局アナウンサーによる決め台詞。 この言い方だと、単に次回開催未定と言うより、美輪さんもそろそろお迎えでごんすというようにも取れてしまうので、これってどうなの?と主人と顔を見合わせて爆笑してしまった。
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