今日の晩御飯は豚しゃぶ! 野菜を洗って切る。メインは水菜。 豚肉はお湯の中に泳がせて、白くなったら引き揚げる。 肉の作業が終わったので、さて野菜を盛り付けようと笊に目を遣ると、
笊の縁に青虫がもぞもぞ。
いやああああああ 私の叫び声を聞いて、主人が駆け付けた。 「どうした?」 「ざ、笊にむしむしが……うう」 「ああ、これはちょうちょになる青虫だね。外に放してやるよ?」 こくこくと頷く私。勿論涙目である。 先に水菜をボウルに移して、虫付きの笊を持って主人は出て行った。
「外に捨てて来たよ。無駄な殺生をせずに、いい事したねシオン」 「だって、仮令屍骸でも、次のごみの日まで虫と一緒に過ごすなんて嫌なんだもん。私の買った野菜について来るなんて許せん。お外で鳥の餌になっちゃえばいいのに!」 「……折角外に放して来たんだから、無事な成長を祈ってやろうよう」 嗚呼でも、庖丁で真っ二つに切らなくて良かった! もしそうだったら、きっと水菜と一緒に食べちゃっていただろう。 生のまま。 「う……」 あとは盛り付けるだけだった筈の水菜を見た。 一応ちゃんと水洗いしたのに、青虫はそれだけでは取れなかったのだ。 2匹目や、1匹目の糞が着いていないとは言い切れない。 水洗いでは不充分だ。煮沸消毒しかない! 肉を茹でたお湯を沸かし直し、灰汁を掬って水菜を投入した。 火が通り過ぎないうちに引き揚げ、水で冷やして盛り付けると、ぺったりとして当初のボリュームがなくなってしまった。 でもいいの。消毒したから。
結婚前はしゃぶしゃぶと言えば、牛肉だったな。 豚しゃぶがあるなんて、大学に入るまで知らなかったし。 どんだけ贅沢な暮らししてたんだ?と主人には言われるが、暮らしは質素だったぞ。 愚妹に至っては、貧乏で大学に行かせて貰えるか心配していたらしいし。 なんかずれてんのかね、うちの実家って。
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