天上天下唯我独尊

2010年02月19日(金) スポーツか芸術か

お昼頃、主人の親から電話があった。
近くまで来ているので、届け物を持って来るとの事。
何時ごろがいいかと訊かれたので、迷わず、
「2時過ぎ……2時半なら大丈夫です」
と答えた。
勿論2時というのは、フィギュア・スケート男子シングルのフリー・スケーティング予定終了時間である。
電話が鳴った時も観戦中だったので、チッ誰だよこんな時に電話しやがってと思ったのは、ここだけの話。
フリーの演技が全て終了して、魂が抜けた状態になっているところに、主人の両親はやって来た。
タイミングとしては上出来である。

高橋選手、銅メダルおめでとう。
出るからには金を狙って4回転に挑戦して転んでしまったが、4回転を飛ばずに無難に纏めていたら、ノーミスだったとしても後悔が残ったことだろう。
失敗したのは悔しいだろうが、飛ばない後悔よりはいいと、本人も思っているのではないだろうか。
表彰台では目に涙を浮かべていて、こちらも貰い泣きしそうだった。
織田選手は気の毒だった。
演技が始まった時からずっと、表情が硬かったのが気になっていた。
コミカルなプログラムで、いつもはもっとにこにこしていた筈なのに。
おまけに靴紐が切れるなんて、ついてないな。
小塚選手には驚いた。
今大会、殆どの選手が挑戦しては自滅して消えて行った4回転を、あそこで決めるとは。
今持てる力を本番であれだけ出せれば、たいしたものだ。
4年後が楽しみである。

がっかりしたのは、プルシェンコ君だ。
彼は確かに凄い。普通の選手なら転ぶような軸のずれたジャンプでも、意地で着氷する。
ここ8年間、ジャンプで転んだ事が無いそうだ。
人を惹き付ける滑りをし、客を乗せるのも上手い。
しかし今日の彼の演技は、非常に雑だった。
実況のアナウンサーが、
「力で捻じ伏せたような、そんな4分30秒でした」
と言っていたが、まさにその通り。
強引なのだ。美しくない。
あれで金メダルでは、他の選手が気の毒だ。
緻密でミスの無い演技をしたライサチェクの演技は、完璧だった。
プルシェンコ君はそれが不満だったようで、それを隠そうともしない。
表彰台に載る時も、わざわざ1位の台を踏みつけにしてから、2位の台に向かって、ブーイングを浴びていた。
表彰式後の会見でも、言いたい事だけ言うと、さっさと中座してしまったらしい。
……いつまで経っても子供だなあ。
日本でそんな事してみろ、親が出て来て「うちの息子は五輪に出場する資格はありません」と謝罪する事態になるぞ。
プルシェンコ君のスケートは観ていて楽しいし、スケートだけしている分には、何やってもいいよと思うけれど、スケート人生はそんなに永くない。
彼にはそろそろ大人になって欲しい。好きだからこそ、そう思う。

他の選手達が4回転を跳ばない事について、プルシェンコ君は相当怒っているようだ。
そりゃ、技術を磨かないと、より高みを目指さないと、競技の進化はそこで止まってしまうという彼の気持ちは解る。
しかし、高度な技というのは、その分危険も伴う。
フィギュア・スケートでは、危険だという理由で、バック・フリップが禁止されている。
でもジャンプだって充分危険なのだ。高橋選手だって、それが原因で大怪我をしている。
金メダルを獲ったライサチェクだって、以前は4回転を跳んでいたが、足だか腰だかを痛めたために今は止めたという。
選手のためを思えば、ジャンプにばかり拘るのは、如何なものかと思う。
しかし以前、伊藤みどり選手が活躍していた頃、私は今のプルシェンコ君と同じ事を思っていたのだ。
当時、伊藤みどりは他のどの女子選手よりも、素晴らしいジャンプをしていた。今でも彼女を越えるジャンプを跳べる人は、そうそういないのではないか。
しかし彼女が、カタリーナ・ビットより評価される事は無かった。
芸術面での評価が低かったらしいが、みどりちゃんのジャンプは今見ても芸術的だと思う。
フィギュア・スケートはスポーツか、それとも芸術か。
男子が4回転をバンバン決めるのを観たい気はするが、それで選手生命を縮めてしまうのでは、本末転倒なのではないか。
その辺りは、これから議論される事になるだろう。

個人的には、ジョニーが可愛かったからいいや。ショート直後の投げキッスにはクラクラ来た。録画すれば良かった。しかも可愛いだけじゃなくていい奴だとは。ジョニー株急上昇だ。
調子はイマイチだったものの、ランビエールは渋みが増して益々素敵な王子様だったし。
ただ、主人が
「この人、ますだおかだの岡田に似てる。パァ!とかやらないの?」
と水を差すような事を……。
うん、閉店ガラガラもやらないから。


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