お昼頃、主人の親から電話があった。 近くまで来ているので、届け物を持って来るとの事。 何時ごろがいいかと訊かれたので、迷わず、 「2時過ぎ……2時半なら大丈夫です」 と答えた。 勿論2時というのは、フィギュア・スケート男子シングルのフリー・スケーティング予定終了時間である。 電話が鳴った時も観戦中だったので、チッ誰だよこんな時に電話しやがってと思ったのは、ここだけの話。 フリーの演技が全て終了して、魂が抜けた状態になっているところに、主人の両親はやって来た。 タイミングとしては上出来である。
高橋選手、銅メダルおめでとう。 出るからには金を狙って4回転に挑戦して転んでしまったが、4回転を飛ばずに無難に纏めていたら、ノーミスだったとしても後悔が残ったことだろう。 失敗したのは悔しいだろうが、飛ばない後悔よりはいいと、本人も思っているのではないだろうか。 表彰台では目に涙を浮かべていて、こちらも貰い泣きしそうだった。 織田選手は気の毒だった。 演技が始まった時からずっと、表情が硬かったのが気になっていた。 コミカルなプログラムで、いつもはもっとにこにこしていた筈なのに。 おまけに靴紐が切れるなんて、ついてないな。 小塚選手には驚いた。 今大会、殆どの選手が挑戦しては自滅して消えて行った4回転を、あそこで決めるとは。 今持てる力を本番であれだけ出せれば、たいしたものだ。 4年後が楽しみである。
がっかりしたのは、プルシェンコ君だ。 彼は確かに凄い。普通の選手なら転ぶような軸のずれたジャンプでも、意地で着氷する。 ここ8年間、ジャンプで転んだ事が無いそうだ。 人を惹き付ける滑りをし、客を乗せるのも上手い。 しかし今日の彼の演技は、非常に雑だった。 実況のアナウンサーが、 「力で捻じ伏せたような、そんな4分30秒でした」 と言っていたが、まさにその通り。 強引なのだ。美しくない。 あれで金メダルでは、他の選手が気の毒だ。 緻密でミスの無い演技をしたライサチェクの演技は、完璧だった。 プルシェンコ君はそれが不満だったようで、それを隠そうともしない。 表彰台に載る時も、わざわざ1位の台を踏みつけにしてから、2位の台に向かって、ブーイングを浴びていた。 表彰式後の会見でも、言いたい事だけ言うと、さっさと中座してしまったらしい。 ……いつまで経っても子供だなあ。 日本でそんな事してみろ、親が出て来て「うちの息子は五輪に出場する資格はありません」と謝罪する事態になるぞ。 プルシェンコ君のスケートは観ていて楽しいし、スケートだけしている分には、何やってもいいよと思うけれど、スケート人生はそんなに永くない。 彼にはそろそろ大人になって欲しい。好きだからこそ、そう思う。
他の選手達が4回転を跳ばない事について、プルシェンコ君は相当怒っているようだ。 そりゃ、技術を磨かないと、より高みを目指さないと、競技の進化はそこで止まってしまうという彼の気持ちは解る。 しかし、高度な技というのは、その分危険も伴う。 フィギュア・スケートでは、危険だという理由で、バック・フリップが禁止されている。 でもジャンプだって充分危険なのだ。高橋選手だって、それが原因で大怪我をしている。 金メダルを獲ったライサチェクだって、以前は4回転を跳んでいたが、足だか腰だかを痛めたために今は止めたという。 選手のためを思えば、ジャンプにばかり拘るのは、如何なものかと思う。 しかし以前、伊藤みどり選手が活躍していた頃、私は今のプルシェンコ君と同じ事を思っていたのだ。 当時、伊藤みどりは他のどの女子選手よりも、素晴らしいジャンプをしていた。今でも彼女を越えるジャンプを跳べる人は、そうそういないのではないか。 しかし彼女が、カタリーナ・ビットより評価される事は無かった。 芸術面での評価が低かったらしいが、みどりちゃんのジャンプは今見ても芸術的だと思う。 フィギュア・スケートはスポーツか、それとも芸術か。 男子が4回転をバンバン決めるのを観たい気はするが、それで選手生命を縮めてしまうのでは、本末転倒なのではないか。 その辺りは、これから議論される事になるだろう。
個人的には、ジョニーが可愛かったからいいや。ショート直後の投げキッスにはクラクラ来た。録画すれば良かった。しかも可愛いだけじゃなくていい奴だとは。ジョニー株急上昇だ。 調子はイマイチだったものの、ランビエールは渋みが増して益々素敵な王子様だったし。 ただ、主人が 「この人、ますだおかだの岡田に似てる。パァ!とかやらないの?」 と水を差すような事を……。 うん、閉店ガラガラもやらないから。
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