天上天下唯我独尊

2007年05月17日(木) 夫婦の行く末

私が通っている総合病院の待合室は、診療科目毎に分かれておらず、色々な科を受診する患者が1箇所に集められている。
そこで、一組の夫婦を見掛けた。
年の頃は、多分ご亭主が70歳代、奥さんが60歳代ではないかと思われる。(他人の年齢を推測するのは、非常に苦手だ。元々人間に対する興味が薄いので)
私は持参した文庫本を読むのに熱中していたのだが、奥さんの声が余りに大きくて耳障りなので、顔を上げた。
太った奥さんは、隣に座った亭主に
「ほら、いつまでもお菓子持っていないで、さっさと仕舞って! もたもたしない!」
と大声で言っている。殆ど、怒鳴っているに近い。
白髪がぽやぽやと残った禿頭のご亭主だが、そんなに耳が遠いのだろうか。
それなら耳元で話せば良いものを、具合の悪い患者もいるであろう病院の待合室で大声を出すとは、何と迷惑な。
眉間に皺を寄せて見ている私に目もくれず、奥さんは尚も亭主を叱る。
見れば、ご亭主の細い腕は、ぷるぷる震えている。
脳外科の患者だろうか。
だとすれば、動作がもたもたするのは仕方ない事なのに……と思ってみていたが、奥さんは怒りっ放し。
怒っても、どうにかなるものでもないのだが。
確かに健康体からすれば、病人がもたもたするのは、もどかしくて苛々するのだろうが、余りに愛が無さ過ぎる。
見兼ねた看護婦さんが、
「奥さん、もう少し旦那さんに優しくして上げてね」
と声をかけていたほどである。
暫くすると受付番号を呼ばれて、その夫婦は診察室に入って行ったが(やはり脳外科だった)、小さい歩幅でよろよろと歩くご亭主に手を貸すどころか、奥さんは後ろから、まるで汚い物に触れるかのように、指で「早く行け」とばかりに突付いていたのだった。

……あんまりだよ(涙)。

夫婦の事は本人達にしかわからぬものだが、ああはなりたくないと思った。
夜、帰宅した主人にその話をし、
「私はなるべく(←絶対じゃないのかよ)、貴方がヨイヨイになっても大事にするからね」
と決意表明をしたのだった。
すると彼はこう言うのだった。
「そうだねえ。シオンが寝たきりになったら、僕は下の世話も何でもしてあげるつもりだけれど、逆の立場だと、おしめの交換は3日に1度ね!とか言われそうだなあ」
「流石にそこまではしたくないけれど、未来の事はわからないから、私より先に寝付いたり呆けたりしないでね。それに、もっと痩せてくれないと介護も出来やしないわよ」
いやホントに切実ですよ、そのお腹。


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