恋の炎は、簡単には消えない。 私には高嶺の花だと知っていた。 けれど、やはり諦め切れない。 だから私はあなたに恋し続ける。 触れるどころか、その姿を2度と見る事すら叶わなくても。
廃盤だと聞いて永遠に諦めた筈の例の鞄だったが、私は何かに取り憑かれたようにネットで探していた。 公式サイトから消え、オークションでも色違いしか見付からず、あちこちの輸入代行業者に問い合わせては入手不可と言われ、嗚呼もう駄目なのか……と絶望しかけた時、最後の代行業者から連絡メールが来た。 諸経費込みで、7万円。 店頭価格よりは安いが、それでも庶民には迷える値段である。 しかしここでまた見送ったら、私は再び、いや三度、後悔する事になるだろう。 ネットバンキングで代金を振り込み、待つ事1週間。 ほわ〜んな鞄は海を越え、とうとう私の家にやって来た。 うふうふうふ。 包み紙を剥がして大きな箱を開け、薄紙に包まれた鞄を手に取る。 嗚呼、幸せ……。
「ジャジャーン! 買っちゃいました♪」 帰宅したダーリンの目の前に、鞄を突き付けると、彼はこう言った。 「えっ、ホントに買っちゃったのか……」 え? だって貴方、廃盤と聞いて凹んでいる私に、こう仰いましたよね。 そんなに欲しかったら、買ってもいいよ〜って。 「もしかして」 鈍い私もやっと気付いた。 「廃盤で、どうせ手に入らないだろうと思っての『買ってもいいよ』発言だったの?」 「ハハハ、そういう事。まあ、買っちゃったんだから仕方ないか。暫くシオンのお小遣いは無しだな。シオンに対して出る扶養手当は、ひと月1万5千円なんだから、5箇月分か」 でもいいの、やっと手に入ったのだから、ダーリンありがとう。 大事に使います。
|