買い物に行かなきゃな、と思いつつ、結局行かず終いになってしまった。 今日はダーリンが車で出勤したので、買い物に行くには徒歩か自転車しか無い。 居間の窓から見える空はどんよりと暗く、今にも雨が降り出しそうだったので、どうしようかなあと思っているうちに午後になってしまった。 ところが昼過ぎに、反対側の和室の窓から外を見ると、空は明るく晴れていた。 しかし午後には着物屋さんが来る予定なのだ。 今から出かけたら、行き違いになってしまう。 着物屋さんが帰ってから買い物に行こうと思って待っていたのだが、なかなか来ない。 約束の時間をとうに過ぎてから、着物屋さんはやって来た。 着物屋さんが帰ってから外の様子を見ると、冷たい風が吹いて、寒くなってしまっている。 結局、私は買い物に出掛けられなかった。
何となく、出掛けたくなかったのかも知れない。
そろそろ晩御飯の支度をしなくちゃなあ、どうしようかなあと思っているうちに、玄関のチャイムが鳴った。 ダーリンが帰って来たのだ。 どうしよう。 いつもなら真っ直ぐ居間にやって来て鞄を置くのに、今日に限って彼はなかなか来なかった。 どうやら、トイレに行きたかったらしい。 どうしよう。 私はその場にスリッパを残して、そっと和室に移動した。 押入れの襖を開けて入り、内側から襖を閉めた。 ダーリンが居間の戸を開ける音がした。 いつこっちに来るかと、私はずっとドキドキしていた。
数分経っただろうか。 ダーリンが和室に入って来て、電気のスイッチを入れた。 襖の隙間から、明かりが見えた。 ドキドキ。 いきなり襖が動いて、私の足に当たったので、慌てて引っ込めた。 今度は反対側の襖が全開した。 「何隠れてんの」 襖を開けたまま彼が立ち去ろうとするので、私は押入れから身を乗り出した。 「待って〜ここから下ろしてよ」 「見付けに来てやらないと、シオンが可哀相かなーと思って探しに来たよ。ただいま」 「ええ〜。じゃあ知ってて放置してたの?」 「うん、パソコン開いて遊んでた」 酷いなあ! 押入れから下ろして貰いざま、そのまま首に抱き付いてうひゃひゃと笑い転げてしまった。 私は鬼がいつ来るかと思ってドキドキし過ぎて、押入れの中で不整脈まで起こしていたというのに〜。
晩御飯は、ダーリンが適当に作ってくれた。 適当な割には、美味しかった。
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