主人は、絶対浮気をしないと言ったし、私もそれを信じていた。 それなのに。 「今日、この子うちに泊めるから。終電に間に合わなかったんだって」 と彼は言って、職場の若い女の子を連れて来た。 彼女は小さく挨拶すると、彼に案内されて部屋に引っ込んだ。 「あら、そう。じゃあお布団の用意をしなくちゃね」 私がそう言うと、それは適当にやっておくからシオンは休んでいいよと言われたので、素直に従った。 翌朝目が覚めると、隣りに主人がいない。 彼は、彼女の部屋から出て来た。 唖然とする私を尻目に彼女はさっさと出かけてしまい、私は平然としている主人に噛み付いた。 「一寸、これはどういう事? 浮気したのね!」 「ああ、そうだよ」 「離婚するわ。私は貴方の事が大好きだけれど、こんな事されて悲しいから、もう一緒にはいられない」 と私が言うと、彼はそれは駄目だという。 「離婚はしない。それだけは許さない」 「何故? 許す許さないは貴方じゃなくて私が決める事でしょ」 幾ら私が言っても、いつもの彼とは全くの別人で、取り付く島もない。 余りに理不尽な仕打ちに、私は絶望した。
そこで目が覚めた。 隣りでは、主人が寝息を立てている。 夢で良かった〜とは思ったが、夢とは言え考えてもみなかった事態を体験し、まだ心臓がどきどきしていた。 起きてから、 「こういう夢を見たの。とっても悲しかったの。浮気しないよね?」 と彼に言うと、 「しないよ。そういう夢を見たのは、自分の願望の裏返しだよ」 との返事。 つまり、私の浮気願望がそういう夢になって表れたのだと言う。 でも私、浮気願望なんて無いんですけれど。 嫌な夢だったので忘れたいが、余りに強烈でトラウマになりそうなのでネットで調べてみたところ、浮気される夢というのは相手が自分に夢中だという事らしい。 つまり、主人は私に首っ丈なのだ。 ああ良かった〜これでやっと安心した。 全く、あの人の言う事は本当のようでいて結構いい加減なんだから。
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