実家の母から電話があった。 用件は、関西に住む母の叔母の見舞いに行こうという話だったのだが、 「あ、それから1つお願いがあるんだけれど」 と母が言うので何かと思うと、 「サラ金からだけは、お金を借りないでね」 だと……どんなお願いだ。 サラ金なんて、頼まれたって借りたくありませんが。
母の話によると、実家の近所の人がサラ金の返済で大変らしい。 家族構成は、老夫婦と若夫婦と孫2人。 そこの若奥さんがサラ金に手を出して返済が焦げ付き、家族の知るところとなってしまった。 しかもその奥さん、なんと自分の勤務先のお金にまで手を付けていたとかで、老夫婦や夫がその分を負担する事で、何とか刑事告訴は勘弁して貰ったそうな。 家計は火の車、長男は専門学校を中退する破目になり、家族で若奥さんの拵えた借金を現在返済中との事である。
「うわー、バッカでえ」 私も知っている人の事だが、思わずそう口から出てしまった。 フジテレビ系列で毎朝やっている「こたえてちょーだい!」(言っちゃあ悪いが最下層的な、頭の足りなそうな人々の体験談によって構成される番組。見ていると胸がムカムカして来る)ではよくある話だが、身近な所にもあるとは驚いた。 「お父さんは『うちの子達は大丈夫だ』って仰るんだけれど、心配になっちゃって」 ヘンな所で心配性の母である。 「私は大丈夫よ。亭主の稼ぎで充分やって行けるし、そんなに贅沢しなけりゃ困る事はないもの。それに借りるならサラ金に行かずに、まずお父さんお母さんに借りるから」 「貸してあげるわよ、億は無理だけど。ドビーちゃん(妹)も大丈夫かしら」 「あの子もサラ金に手を出すほど馬鹿じゃないでしょ。そんなに心配すると禿げるわよ、お母さん。で、何故若奥さんは借金なんてしたのかね。パチンコでもやってたの?」 と私は訊いた。 主婦がサラ金に走るパターンとして考えられるのは、財政難とギャンブルである。 あそこの家は、老夫婦も若夫婦も大人は全員働いている。 お金が無くてサラ金に走るというのは考え難い。 という事は、パチンコ中毒だろうと私は推測したのだ。 「パチンコはやっていなかったみたいよ。あそこの若奥さん、着飾るのが好きでね、ブランド物に注ぎ込んだんじゃないのかしら。それに人に物を上げるのが好きな人だったから、それで色々買っていたみたいよ」 「そっちかあ。要するに分不相応の見栄っ張りな訳ね。あの家も、とんでもない嫁を貰ったって思っているんじゃないの」 私ったら、知っている人に対して酷い言い様である。 「貴女も気を付けてよ。とんでもない嫁だって言われないようにね」 と母。 それはもう思われているから大丈夫、とは流石に言えなかった。
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