天上天下唯我独尊

2005年12月23日(金) 第74回日本音楽コンクール

年末のこの時期になると、毎年NHK教育で「日本音楽コンクール」の本選の模様を放送する。
しかし年に1回の事だし、NHKは民放のようにしつこく予告を放送しないので、見忘れる年もある。
そして後で知って、悔しい思いをするのだ。

私は音楽は好きだが、実はよく知らない。
しかし私より音楽に詳しいダーリンが、色々と解説を付けてくれる。
バイオリン部門の演奏を見ながら、
「へえ。この子いいね。音程がしっかりしている。体の芯が安定しているからかな」
と言うので、私は訊いた。
「芯って?」
「姿勢がちゃんとしてるって事。五嶋みどりなんか思い切り前屈みになって弾くし、庄司紗矢香なんて目を瞑って頭ぐらんぐらんさせて弾くでしょ。トランス状態みたいで、そのうち何かが憑依するんじゃないかってぐらい凄いよ」
ホントかよ……私は見た事無いから知らないけど。

ピアノもバイオリンもホルンも声楽部門も、本選は協奏曲を演奏する。
しかしホルンだけは何故かオーケストラとの共演ではなく、ピアノ伴奏だった。
以前見たクラリネット部門もそうだったような気がする。
管楽器だけ差別されているのか?
ホルン部門優勝者は、のびのびと自由に吹いていた。
実は口唇ヘルペスだかが出来ていたという噂も……それでよくあれだけ堂々と演奏出来たな。
何位の人か忘れたが、「楽しんで吹けました」とインタビューに答えた割には、実際ちっとも楽しそうに吹いていなかった人がいた。
終わった時なんか、「やっと終わった!」という顔だったし。
気の毒だったのは、わざわざ外国からコンクールのために戻って来たという人。
緊張のせいか、はじめのオクターブからしてボロボロな演奏で、聴いているこっちが辛くなった。
幾ら練習で上手に吹けても、本番で吹けなきゃプロにはなれない。
同じ芸術でも、絵と違って、音楽は保存が利かないからなあ。
音楽は水物、ある意味瞬間芸である。

我々夫婦は音楽好きだが、ダーリンのセンスは私の理解を超えている。
ピアノ部門では、本選でプロコフィエフを弾いた人が聴衆賞に輝いたのを見て、
「プロコが一般の聴衆に受け入れられるとは。何て素晴らしいんだ!」
と勝手に解釈して喜び、熱くプロコについて語り出したのでこの辺は省略。
そして作曲部門というのがある。
他の部門に比べて拍手が少ないなあと思ったら、客席ガラガラだよ!
それぐらい、一般には理解され難い曲が入賞しているのだ。
つまり、おもくそ現代曲なのである。
以前見た時は、弦楽器を三角定規(しかも小学校にあるようなでかいやつ)で弾くという、常人には何かのギャグかとしか思えないようなパフォーマンスが飛び出していた。
しかも曲が、これまた常人には音楽には聞こえない音楽なのだ。
嘗て黛敏郎が「現代曲には顔が無い」と言っていたが、まさにそうなのだ。区別が付かない。
これを演奏する人や審査する人は楽しいのか?と思ってしまい、現代音楽を理解出来ない私は作曲部門にそっぽを向いていた。
しかしこれがダーリンには楽しかったらしく、
「すげー面白い♪」
の声で彼を見ると、なんとTVの画面に50cmの距離で大接近していた。
解る人には面白いらしい……。


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