巨大なクマのぬいぐるみによる、大量連続殺人が発生した。 しかし、その姿を見た者は1人もいない。 何故ならば、見た者は必ず殺されるからだ……。
クマが近くまで来ている。 教室には大勢の人がいるが、皆にそれを報せたら途端にパニックになるのは目に見えている。 そうなったら、誰も助からないだろう。 私は1番仲の良い友人にだけその事を伝え、2人でこっそりその場を抜け出し、全力で走り去った。 暫くして戻って来た時には、もうクマさんの姿は無く、現場は血の海だった。 その中に、恋人がいた。 正義感の強い人だった。 私が危険を報せれば、彼は必ずその場にいた全員で逃げる事を考えただろう。 しかしそんな余裕は無かった。 だから私は逃げたのだ。彼を見殺しにして。 「ごめんね」 彼の亡骸に呼び掛け、見開いたままの瞼をそっと閉じてやった。
目覚めた時の感想は、「嗚呼、夢で良かった」。 そして酷く疲れていた。 どんな意味の夢なのか知らないが、兎に角怖かった。
夜、お布団に入って、その夢を思い出した。 「ねえねえ、今朝夢を見たの。凄く怖かったよ〜」 とダーリンに引っ付くと、彼はいい子いい子してくれた。 「よしよし、じゃあ幸せな夢を見られるように、おまじないをかけてあげよう。『お金お金お金』〜」 「……何ソレ」 「だって、シオンお金好きでしょ。宝籤の当たる夢とか、嬉しくない?」 「そりゃ現実に当たったら嬉しいよ。でもね、夢だと却って目覚めた時にがっかりすると思う」 と私が反論すると、彼は一瞬考え込んだ。 「よし判った。じゃあ『連続殺人連続殺人連続殺人』〜」 「いや、それは今朝見たから。全然いい夢じゃなかったし」 「そうか。じゃあ、『他人の不幸他人の不幸他人の不幸』〜」 それが私にとっての幸せって……貴方何か勘違いしていませんか!?
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