日々是迷々之記
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| 2004年03月30日(火) |
流れに飲まれるようにして |
夕方ニュースを見ながらお茶を飲んでいると携帯電話が鳴った。元派遣会社からだ。気が重かったが出ない理由にはならない。はい、もしもしと出た。
すると、「あ、なおぞうさんですか。支店長がお話したいって言ってるんで、かわります。」担当者の声がした。相変わらず自己中心的なやつだ。「あ、もしもし、なおぞうさんですか。この度はご迷惑をおかけしています…。」支店長と思われる人物が出た。
担当者のFよりはまだ良識がありそうな話しぶりだった。私が見せた本のコピーを元に、労基法、民法を当たって、再度賃金を計算した結果、5日分を追加で振り込みたいとのことだった。私は意地悪なので、「土曜日は3日分しか出せないということでFさんから伺いましたが。」と言ってみた。すると、ああ、それは間違いです。Fは法規に疎く、まぁ、こちらの指導不足と申しますか…。と言っていた。
5日分なら契約書の契約日数そのままなので、不満はない。それなら構いませんがというと、今から直接謝罪しに来るという。えらい気合いやなと思いつつも、それなら、私は聞いてみたいことがあるので、OKした。
それから1時間後。家の近所のファミレスで会った。が、担当者Fとさっきの支店長がやってきて、私に菓子折を渡し、「このたびは迷惑をおかけしました。追加分は2日に振り込みます。」それだけだった。私は、いろいろ聞いてみたいことがあった。会社として、営業社員をどのように教育しているのか、こういったトラブルの処理の流れはちゃんとできているのか、そして、F氏による「ぶっちゃけ、お金が欲しいだけなんでしょ。」というような不適切な発言をどう考えるかなど、聞いてみたいことは山ほどあった。
が、相手は無料にもかかわらず、駐車場にクルマを入れることもなく、路上にクルマを置き、会話は3分で済んでしまった。とりつく間を与えない、とにかく謝ってしまう、それはそれで一つのやり方なんだろう。が、私は消化不良だった。
別に派遣会社側に派遣スタッフの悩みを全て解決させるような義務は無い。ただ、今回の場合は不適切な一言で私は必要以上に考え込んでしまった。言葉の刃は放つ側の人間は放った瞬間にわすれるけれど、放たれた側は一生忘れないやっかいなものであると思う。
金が欲しいだけ、金が欲しいだけ、金が欲しいだけ。まるでお金が万能であるかのような言い方だ。絶対にそんなことはない。もし私の収入がビルゲイツと同じくらいあったとしても、私の失った物は何も戻ってこないからだ。いつの間にか亡くなってしまった父親、思い通りに動かなくなった右足、バイクに乗ろうという情熱と若さ。そういうものは戻ってこないわけで。
ある意味全ての尺度がお金に換算できる人はとても幸せだ。漠然とした不安さえも通帳の残高を眺めていれば吹き飛んでしまうんだろう。
だんだん派遣会社との話からそれてきたが、「未払い分を支払います。いままでご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」というのが派遣会社の言い分だ。私はそれを受け入れることにした。派遣会社の人たちは、きっと私の言い分など理解しがたいのだろうと思ったから。
土曜日の話し合いの後、私は派遣会社宛に手紙を書いていた。「F氏からの提案である3日分を追加で支払うという申し出は到底100%納得できる物ではないが、F氏が勉強不足であると認めている。それは職務怠慢、管理義務違反であることは否めないが、F氏がこのことを重く受け止め努力することを私は望んでいる。そして、私自身、不適切で侮辱的な発言を受け、一刻も早く御社とのつきあいを解消したいと思っている。なので賃金は3日分を追加で構わないので、今回の顛末に関する釈明文、今後同じようなことが起こった場合の対処法、侮辱的発言に関する謝罪文を署名、捺印、社判入りで文書で頂きたい。」との内容だ。
私はこれを受け入れて欲しかった。なので書き方、言い回しを選んでいた。厳しい書き方をすれば怒りは伝わるのだろうが、意図は伝わらない。自分のやってきたことの不勉強さ、軽率さ、甘さを思い知って、恥じて欲しかった。
が、敵はお金で解決しようという結論だったのだろう。私とは全然生き方の違う人たちだと思う。私はしたためた手紙をプリントアウトせず、法規を遵守したから、もういいや…ということにした。私が今更精神的安寧を求める手紙なぞ渡しても向こうにとっては意図不明なんだろうなぁと思ったからだ。
人生にはこういうふうに過酷な二者択一が何度となく訪れる。自分は納得した上で選択をしたいと思いつつ、流れに飲まれるようにしてどっちかを選んでしまうのだ。誤解を恐れずに言えば、相手の毒気に飲まれてしまうのだ。
かくして今回もある意味意外な結末を迎えた。読んでくださった皆さん、ありがとうございました。誠実にあられますように。(明日からはいつものあほ話に戻ります。)
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