日々是迷々之記
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アジの南蛮漬けとチクワというどうみてもつまみにしかならない夕食を食べながら、NHK教育の「おしゃれ工房」を見た。今日のお題は「家で子供のヘアカット」である。
美容院代が勿体ないから…という理由で家で子供の髪の毛を切るお母さんが増えてきているらしい。わたしの中では美容院に行きはじめたのは中学生になるくらいのころからだったので、「4歳児の娘の髪を美容院でカットする。」というのはなんだかイメージが湧かない。が、世間ではそうであるようだ。
番組では、毛先を揃えるだけの基本的なカットから、シャギーを入れる方法まで説明していた。使う道具も、散髪バサミに梳きバサミ、くし、髪を留めておくバレッタのようなもの、スプレーなどを用意していた。もちろん、タオルを首に巻き、ケープを巻いててるてる坊主スタイルでカットしている。
本当にどこのご家庭でもそうやっているのかは知らないが、私はビックリした。家庭での散髪はもっとシンプル、というかズサンなものだと認識していたからだ。
約20年ほど前まで、私は母に髪の毛を切ってもらっていた。というか、切られていた。昔なので、女子の髪型にバラエティーはなく、おかっぱ、ストレートのロング、ちょっとこじゃれてもお姫様カットくらいのものしかなかった。そこで私は生まれてから10年ほど常におかっぱアタマだった。イメージとしては楠田枝里子のような超正当派のおかっぱである。
が、しかし、わたしは楠田女史のようにほっそりしたシャープなタイプではなくかたぶとりの健康超優良児、髪質も剛・黒・多毛のくせ毛である。それでおかっぱにするとどうなるか?答えは性別不明である。ホラ、たまにいるでしょう?小学生男子でちょっと小太り、なんか髪の毛が長くて、ハンバーグ大好き、走るの大嫌いみたいなヤツが。わかりやすくビジュアル化すると、平民に変装したパタリロが近い。ほっぺたを覆うようなふわりとしたおかっぱである。
そんなヤツ現実にいねーよ!と思うかもしれないが、いるのである。私がそうだった。私は当時からまわりが見えていなかったので、おでこの生え際とまゆ毛の真ん中で前髪がブツリと切られていようとも、膨らんだサイドの髪の毛がほっぺたに覆い被さっていようとも、えりあしを父親のひげそり用T字かみそりでゾリゾリされようとも、いっこうに気にせずそのへんを走り回っていた。
しかし、転機が訪れた。小学5年の夏休みだったと思う。母親の田舎である鹿児島に行ったとき、親戚が集結しわいわいがやがややっていた。そこに、母親の妹で美容院をやっている人がいた。その人がわたしの髪型がおかしいと言い出したのだ。そして、「私がやってみせるわ。」という感じで私の髪の毛を切り出した。数分後、私は世界で一番滑稽な生き物に降格させられた。
マッシュルームカットである。しかも、「マッシュルームカットになり損ねた」マッシュルームカットである。ベースは、おかっぱである。そこで無理矢理前髪を曲線にカットし、サイドとつなげてエッジは内巻きである。マッシュルームカットといえば、来日当時のビートルズだが、彼らがそれなりに見れるのは襟足が長いからである。私の場合はおかっぱで強引に丸みを出しました!というのがありありで、どう見ても「えのきだけ」である。
わたしは2学期が来るのがイヤだった。学校に行ったら「死ね!毒キノコ!」とか言ってアホな男子に蹴り入れられるだろう。そんなアホに負けはしないが、「所詮キノコのあがき」でしかないのは事実だ。
結局それからかなり長い間髪の毛を切らなかったように思う。そして一年後、私は大阪に転校し、初めて友達と一緒に美容院へ行くという経験をした。大阪は以前住んでいた町と比べるとものすごい都会で、みんなモダンだった。おかっぱ振り乱して暴れ回るという感じではなく、小学生でも編み込みにしていたり、ボーイッシュなショートカットの子がいたりして、みんな美容院でカットしていたのだ。
そこに髪の毛ぼさぼさの山ゴリラのような転入生が来たのである。わたしは今までの自分を急激に恥じ、かぱっとショートカットにしたのである。そして、朝髪の毛を洗うという暴挙にまで発展した。そしてそれは中学生になってからも続いた。しかし、まだ若い私は美容院に行くときに「少女マンガ」を持って行き、「こういう感じにしてください。」と注文していたのだ。
それは時に、「紡木たく」のマンガであったり、「渡辺多恵子」のマンガであったりいろいろだったのだが、要は「耳を出したショートカット」である。本人はマンガのキャラになりきっている。そして朝シャン。が、ズボラなのは生まれつきで、洗っても乾かす時間がなかったのだ。そこでブラシでとかして学校までは爆走してゆく。そして、口の悪い友人がある日こう言った。
「なんか、斉藤清六に似てんなぁ。自分。」がががが〜ん…。当時私はかなりデブ化が進んでいた。そしてショートカット。ほっぺたが膨らんでいる。どう見ても斉藤清六である。しかし、自分では少女マンガのキャラのつもりなのだ。私はテレビの中の斉藤清六を見て見ぬ振りでごまかした。ここで現実を直視すれば、もっと違う人生があったのだろうが、なおぞう14歳はまだまだ未熟者だったのである。
ここまで書いたところで急激に若さゆえの恥ずかしい暴走、恥走とでもいうのだろうか?に過去を消してしまいたい気持ちになってきた。パタリロ→毒キノコ→斉藤清六という髪型遍歴はこれからどうなっていくのだろうか。
思い出すと熱が出そうである。(以下明日につづく。ううう、ダサくて苦しい…。)
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