日々是迷々之記
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例年より桜の開花は早く、ポカポカ陽気に誘われた私はカバンの中にお弁当と、お茶を入れ会社を出た。1時までの1時間、公園でプチ花見をするつもりなのだ。
ビジネス街のど真ん中にあるその公園は、戦時中、滑走路だったとかなんとかで、細長く、中央をどーんと道が貫いている。その両端に桜の木が立ち並んでおり、例年この時期の夜は、会社の花見がそこかしこで行われており、酔っぱらいのオッサンと大量のゴミに埋め尽くされた地獄の様相を呈しているが、まだ、昼間はマシである。ブルーシートで陣取りが行われているくらいだ。
公園に着き、どこで座って食べようかと見回す。丁度良さそうな石などは既に確保されており、私は一本の桜の木の下に腰掛けることにした。腰に巻いたGジャンを敷き、桜の木に寄っかかるようにして座り、お弁当を広げる。木をはさんで5メートルほど離れたところには、陣取りの10m四方ほどのブルーシートが敷いてあり、陣取りをしているOLさんが制服姿で腰掛けて座っている。
お弁当を食べながらうららかな春の日射しにしばしボーっとした。
と、そこに、女性二人組が、そのブルーシートのOLさんに話しかけていた。どうやらここに座らせて欲しいとお願いしているようだが声は聞こえない。その二人組は了承を得たようで、少し離れた位置に腰掛けた。
すると、それを見ていたのか、今度は若いカップルが同じように訪れて腰掛けた。ほんの5分ほどの間に、もう一組、もう一組と増え、そのブルーシートの上にはまんべんなく人間が配置されている状況になった。
わたしも頼めばよかったかなと思いつつ、まぁいいやとも思い、弁当を食べ終わり、お茶をすすっていた。すると、時刻は12時45分。ぼちぼち行こうかと思い、ふと、ブルーシートの方に目をやると、そちらもお開きのようで、最初にいた二人組に会釈をしながら人が帰っていった。
次の瞬間、思いがけないことが起こった。
その最初にいた二人組も席を立って、何も無かったかのように立ち去ったのだ。そのブルーシートの上には誰もいない。要は、その二人組は勝手にどっかの陣取りしていた場所に座って食べていただけだったのだ。いやはや。
公共の公園で堂々と陣取りする奴、そしてその陣地で悠々とゴハンを食べ留奴、そしてそこに間借りする人たち、それを見て色々言う人間。(わたしのことです。)
いろんな人がいるもんである。私は超自己完結型なので、人にお願いして座らせてもらうなんて考えはつゆほども浮かばなかった。
こんな小さな花見ひとつでいろいろな人格を見ることができた。
満開の花の下では、人はみな正直なのだ。 (酔っぱらいのオッサン含む)
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