日々是迷々之記
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朝から風が強く、海に注ぐ川は逆流していた。しかしわたしはさほど気に止めずにオニギリを8個作り、魔法瓶にお茶を入れ、病院へ向かった。今日は病院が終わったら滋賀へ行き、琵琶湖畔でキャンプをするのだ。
病院へ行くと、思ったより空いていた。寒いからみんな家にいるのかな〜などと呑気なことを考えていた。病院が終わるとターミナル駅へ出て、アウトドアショップでカセットガスの寒冷地用を購入し電車に乗った。
京都を過ぎた頃からなんとなくうとうとしてしまい、電車は新幹線との分岐を過ぎ、北陸へと向かった所で目が覚めた。ギョギョ〜、外は横殴りの雨、たまに雪混じりである。駅へ着くとダンナさんが、真冬のバイク装束で待っていた。
開口一番、「テント、朝張って来たけど、風で倒壊してるかもしれんわ。」確かに、風速は10メートルを超えている感じがする。「まぁ、行こか。」ヘルメットをかぶって、カブ90の荷台にまたがる。久しぶりのバイクだ。ひゅんひゅんとカーブを抜ける感じが楽しい。
大きなショッピングセンターで夕食の買い出し。今日のメニューは、鰺のおつくり、たこのキムチ炒め、コロッケ、ハムチーズフライ、メインは鶏肉とキノコのコンソメ洋風鍋。お酒は芋焼酎に紹興酒、ということになった。
買い物を終えて外へ出ると、雨は止んでおり、夕焼けがまぶしかった。ほっとした気持ちでキャンプ場へと向かったが、キャンプ場へ着くと、また雨が降り出しどよんとした気持ちになる。しかも風は横殴りだ。テントはかろうじて立っていた。
とにかくジャケットも脱がずにテントの中へ転がり込む。気温が低く、ガスランタンが点火しない。手でガスカートリッジをぬくめてどうにか点火する。体が冷え切っているので紹興酒をビンごと燗することにした。
しかしなかなか温度があがらない。しびれを切らした私たちは、鍋にどくどくと注ぎ、直接ぬくめることにした。そのほうが早いのだ。火にかけると思いっきり酔いそうな蒸気がもくもくと上がって来た。「ううう、来ますなぁ。」などといいながら、コロッケを網で炙る。
突然、ごごごー、ばきん!と音がした。そとでキャンプ場の立て看板か何かが飛んだようだ。確かにテントも少し傾いでいる。テントに当たる雨音が、何か固形物が当たる音のような感じがする。ダンナさんが、タバコを吸うために少しテントのジッパーを開けてみると、外は横殴りの雪だった。
ザックに付けているキーホルダーになった温度計を見てみると丁度零度だった。これは飲んで暖まるしかない。ラードで揚げたコロッケに舌鼓を打ち、鰺のつくりを食べ終わる頃、早くも紹興酒は空になった。次は焼酎だ。
たこのキムチ炒めを作りつつ、傍らでお湯を作り、焼酎お湯割りにしてみた。しかし、この焼酎、口当たりが軽く、フルーティな芋の風味なのでイマイチ物足りない。紹興酒一本分の酔いが回った私たちは、焼酎も鍋に注いで燗することにした。
この蒸気が殺人的に強烈だった。お酒の飲めない人なら倒れてしまうだろう。焼酎の蒸気が充満したテントの中で、無神経な私たちはワハハと笑いながらたこキムチをつつき、ハムチーズフライを食べ、鍋の準備をしつつ、二度目の焼酎直燗酒をしていた。
この鍋が絶品だった。コンソメにタマネギのぶつ切り、ニンニクの皮を剥いた物を3かけ、タカノツメを4本、鳥足ぶつぎりでだしをとり、第一ラウンドは鴨肉としめじ、第二ラウンドは鶏もも肉とマイタケで勝負した。途中で私が持ってきたしゃけのオニギリをほおばりつつ、鍋を堪能。気が付くと焼酎はあと1センチほどしか残っていない。
頭の中がハレハレ〜となり、そとは嵐だ。温度計は氷点下。しかし寝る前にはトイレということで外へ出ると、嵐の洗礼を受け、アタマからつま先までびしょぬれだ。でも、酔っているのでさほど気にならず、オヤスミアハハ〜などといって、各自寝袋でネムリに落ちた。
ごごご〜、ざざざ〜、外は嵐。でも、酔っぱらいキャンパーには関係ないのだった。
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