両手を広げて、空に祈りを
2005年03月15日(火)   紫灯 -shiakari- (パラレル・達ハイ注意)

「タツ、旦那様をお送りしてさしあげて」
「はい、シア様」

情事の後の気だるげな視線を向けられる
乱れた、色鮮やかな着物をそのままに白い肌を晒して

己が主人の言葉を聞き、主の部屋から下がり
部屋のすぐ傍に佇んでいた人物に傅く

「お送りいたします」
「ん」

刀を俺に渡して、その人物は慣れた足取りで出口まで進んでいく
黙って後ろを歩く



我が主人はこの遊郭でも高い位に在る女郎
まぁ・・・・性別は違うが
そんじょそこらの一般人にはとても手が出せない高嶺の花
自然と、相手も限られてくる

今自分の前を歩いているのはその中でも大得意様
身分の高いなんたら言う武家の息子で
我が主にたいそう執心らしく、そう間をあけずに訪れている

「またのお越しをお待ち申し上げております、ユキヒロ様」
「ん、またすぐ来るって、紫灯にも」
「はい、承りました」

預かっていた刀を返し、床に膝をつき深々と頭を下げる
彼が店を出ていったのを見計らい頭を上げ、部屋へと引き返す


我が主が与えられているのは『紫灯(しあかり)の間』
位の高い彼の人に相応しく、綺麗で広い部屋
この店では、仕事時の名前は各々の部屋に関した名前を使う決まりがあり
彼の人は「紫灯」と書いて「シア」と名乗っていた

「入ります」

一言断ってから襖を開くと、我が主は先程と変わらず気だるげなままで
ゆるりと煙管をふかしていた


「あぁ、ご苦労さん」
「いえ・・・・・シア様、着物をお直しいたします」
「ふふ、2人だけやから堅苦しくなくてええよ・・・・達瑯くん」
「はぁ・・・・・風邪引きますよ?ハイドさん」

お互いに、あっさりと仕事時の堅苦しさを外す
この人を本当の名で呼ぶのは俺くらいだろう

家が火事にあい、家族を失くし路頭に迷っていた俺を
拾ってくれたのがハイドさんだった
それからずっと、彼の専属の付き人として彼の傍に居る

「達瑯くん」
「はい」

肌蹴ていた着物を直そうと傍に寄った俺に近づいてくる
纏っていただけの着物は、はらりと簡単に落ち
無防備に、眩しいほど白い肌を惜しげもなく晒しだす

「湯に入りたいから、連れてって」
「・・・・わかりました」

そう言い放ち、俺の首に回そうとした彼の腕を一時遮る
落ちた着物を手に取り、白く華奢な身体に軽く巻きつけ
今度こそ俺の首に回った手を確認し、彼の身体を抱き上げる
落ちないようにと気をつけながら部屋を出て、回廊を歩く

「そういえば、若旦那、何か言うてた?」
「身請け話のことだったら特に何も」
「あ、そ・・・・その気はないて何度も言うてんねんけどなぁ」
「店主に言っておきましょうか?」
「んー、向こうが聞き入れないようだったら言っといてや」
「はい」

身請け話はあの若旦那だけじゃなくいろいろ出ている
まったく聞き入れるつもりがないのが我が主らしいといえばらしい


「俺は此処で生きていくのが性に合ってんねん
 ・・・・・・達瑯くんと一緒にな」


抱えた腕の中で、もう聞きなれてしまった台詞が発せられる
俺の首に回った腕にきゅ、と力が入るのを感じ、
俺も、彼を抱える腕に軽く力を込めた


ハイドさんは、唯一にして最上の存在

俺にとっての、至福


+++++++

何故か遊郭パラレル(笑)
売れっ子ハイたんと四六時中一緒(ポイント)の付き人たつろ
常連さんのユキと(ここでは出てないけど)キョウちゃん

・・・・という設定が、現在の水葉さんの妄想大ブームです(笑)
達ハイラビュ(え)