みかんのつぶつぶ
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川崎在住時に親しくしていた子育て仲間のひとりから電話があった。1年ぶりか。旦那とやっと離婚できて現在は母子寮にいると。 ちょうど1年前電話で話したときには精神的にも追い詰められ、生活費を入れてもらえないため朝から夜中まで、四つの職業を毎日こなしていた彼女。体調も悪くなっている様子で、でも本来の明るく攻撃的な性格で何とか自分を保っている様子だった。いや、彼女らしさ、というべきか。 あの頃は私もなかなかしんどい毎日だったので、そんな彼女の状態は電話で聞くことしかできなくて、まったく相談相手にはならない相手だった。ただ、早く家を出たほうがよいということ、子どものために我慢をしているという彼女に、その我慢はかえって状況を悪化しているだけだということを伝えたと思う。とにかく彼女の命が危ないと感じたからだ。 その旦那は毎日筋トレをかかさない潔癖症のマッチョだ。気が小さくて力持ち。その鍛えた腕で彼女の身体を痛めつける。いま彼女は、その暴力の後遺症で左顔面の神経が切れていて、ずっと浮腫んだ状態でいるという。彼女は夫の暴力が怖くて怯える女性ではなかった。いつも闘っていた。自分の考えを真正面から伝えて、それに反論できなくなった旦那が暴力を使って彼女を黙らせるという図式。何が歯車を狂わせたのか、子育て時代に家族ぐるみで食事をした場面をふっと思い出す。
そちらは変わりないの?という彼女からの問いかけに、来月で旦那の一周忌になると伝えると、驚きのあまりに彼女が声を失っている様子がよくわかった。どうして言ってくれなかったのかと怒る彼女。私も出席させてくれとの申し出を丁重に断る。今度、ふたりでゆっくり墓参りに行こうねと約束した。一周忌となれば、彼女に気を遣わせるだけだ。金銭的にも余裕がないのに、彼女はきっと無理をしてでも用意してくれるだろう。その気持ちだけで十分なのよ。
旦那さんが作った鯵のマリネ、忘れられないよ、と彼女が呟く。あら、覚えてくれてたんだねと私が笑うと、忘れるわけないよ私は感動したんだもん、と。さすがお互い食いしん坊だけあるね、と笑う。あのときいっぱい作ったからと彼女の家におすそ分けしたんだった。それを覚えていたんだね。
やっと電話をする元気がでたからさ、という彼女の言葉にこれまでの辛苦を感じた。お互い損な性格だよね。辛いと言えずに見栄と意地だけで生きている。人とぶつかりあって傷つけて傷ついて傷だらけ。傷を恐れて自分に嘘をつく生き方なんてできない性質。いつも真正面から人を眺める人見知りで。味方になれば理解されるが敵は星の数ほど。
似たもの同士、先はまだまだ長いぞ。
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